12シーズンぶりに無冠に終わった2023-24からの捲土重来を期すバイエルンが絶好のスタートダッシュを切った。今シーズンから指揮を執るバンサン・コンパニ監督は、いかにしてチームを導こうとしているのか。ピッチ内外の変化、序盤の戦いぶりから見えてきた戦術的アプローチについて分析する。
今、ヨーロッパにおいて最も強度が高いサッカーをしているのはバイエルンかもしれない。
38歳のバンサン・コンパニがバイエルンの新監督に抜擢された時は、懐疑的な声の方が強かった。監督としてはまだまだ駆け出しで、バーンリーを2022-23シーズンにチャンピオンシップからプレミアリーグに昇格させたものの、1年で降格させていたからだ。ドイツ一の伝統を誇るクラブの再建を託すにはあまりにも頼りない経歴だった。
だが、コンパニは結果で雑音をかき消した。
ブンデス開幕戦でボルフスブルクに2-3で逆転勝利すると、第2節フライブルク戦は2-0で勝利し連勝。瞬く間にチームのカタチができあがり、第3節はホルシュタイン・キールに1-6、第4節はブレーメンに0-5で大勝。その間に行われたCLでもディナモ・ザグレブに9-2で爆勝した。
ホームで迎えた第5節レバークーゼン戦は1-1で引き分けたものの、ボール支配率69%対31%、シュート数18本対3本、xG 1.32対0.07と内容で昨季の王者を圧倒。レバークーゼンにとって、シュート3本はシャビ・アロンソが監督になってからワースト記録である。
試合後の会見で、レバークーゼンのシャビ・アロンソ監督は対戦相手を絶賛した。
「昨季もミュンヘンで行われた試合で引き分けたが、今季の方がより難しいゲームだった。昨季との違い? エネルギーの激しさ、そして自分たちを信じる力だ。
今日の試合だけでなく、事前の分析ですでにそれを感じていた。今季のバイエルンはボールを持っている時も、ボールを持っていない時もフルパワーでプレーする。エネルギーにあふれ、メンタルの状態もいい。これぞバイエルンだ」
フルパワー・フットボール――このアロンソの表現は、新生バイエルンの本質を捉えているだろう。
攻撃では近い距離に受け手が立って縦パスを差し込み続け、守備では激しくハイプレスをかける。息をつく暇がないくらい、あらゆる局面でボールも人も走り回る。
アロンソだけでなく、多くのメディアがパワフルなサッカーを連想する表現を用いている。
「過激なまでに攻撃的」(『南ドイツ新聞』)
「プレッシング・モンスター」(『Sport1』)
「攻撃的なパワーフットボール」(『Laola1』)
今季のブンデスを席巻するコンパニ流とはどんなサッカーなのだろう?
激変したチーム走行距離が新スタイルを象徴
……
Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。