30歳を過ぎたいま、ついにJ1アビスパ福岡の主軸CBとなった田代雅也。遅咲きといえるキャリアがついに花開いた理由が明確にある。プレースタイルあるいは言動において「不屈」を示し続ける田代の中には揺るぎない信念があり、それらが如何なるときも燃え続けている。
大きな熱源は何よりも感謝の気持ち
今季第31節時点でアビスパ福岡において最長プレー時間を誇るのがCB田代雅也だ。30試合出場、2680分をプレー。累積警告による出場停止となった第23節サンフレッチェ広島戦を除くすべてのゲームに先発している。
育成年代での輝かしい実績を持つわけでもない田代がなぜ30歳を過ぎたいま、J1リーグで上位チームを脅かす存在となった福岡の主軸選手となれたのか。
その成功の秘訣やエネルギー源が何であるかとの疑問を田代本人にぶつけて自己分析をお願いしたら、とても興味深いいくつかの要素が浮かび上がって来た。
「一番は感謝の気持ちかな。いまこうしてプロプレーヤーとしてサッカーができる環境にいることができることへの感謝が大きな力の源になっている」
「この立場はもちろん個人として勝ち取ってきたものではあるにせよ、そういう環境を提供してくれた各クラブ、チームの監督や強化担当の方々からプレーをする機会を与えていただいたからでもある」
「プロになるまでの道のりにおいても、僕を支えてくれた方がたくさんいて、そういう人たちすべてに感謝している。その恩はプレーと結果で返すしかない。だから、頑張って来ることができた」
「毎週、スタジアムに足を運んでいただいている方たちは、それぞれに労力をかけてくれているはず。そこにも当然感謝の気持ちがあるし、その期待に何とか応えたいという思いは持ち続けている」
課題から目をそらさず受け止める
感謝の気持ちをプレーと結果で示す。言葉にすれば簡単だが、実際には感謝に値するプレーと結果を示すのは簡単ではない。そこにはまた特別なエネルギー、内面的な部分での才能も必要となる。
「僕にエリート意識などまったくない。中学に上がる時には大宮アルディージャと浦和レッズの加入テストを受けて落ちた。三菱養和FCの入団テストも落ちた。法政大学へもスカウトされて入ったわけではない」
「FC岐阜への加入が決まったのも大学4年時の最後。才能に恵まれているとは思わないが、小学校からプロ入り、プロになってからの今まで、人の縁とタイミングにはかなり恵まれていると実感している」
エリート意識が皆無の田代ではあるが、特別な才能があった。まずは現実としっかり向き合える勇気だ。……
Profile
島田 徹
島田徹(しまだ・とおる)/広告代理店勤務の後、1997年にベースボール・マガジン社に転職。サッカーマガジン編集部、ワールドサッカーマガジン編集部で2006年まで勤務した後、07年より福岡にてフリー活動を開始。サッカーマガジン時代に担当を務めたアビスパ福岡とギラヴァンツ北九州をメインに、ほぼサッカーの仕事だけで生きつなぐ。現在はエルゴラッソの福岡&北九州を担当。