FC今治がJ2に駆け上がりそうな気配だ。代表取締役会長の岡田武史氏が2014年に「10年後にJ1で優勝争いを」と宣言してから早10年。クラブは試行錯誤しながら着実に前進を重ねてきた。今季はJ2昇格争いを牽引する立場として君臨し、自動昇格圏を堅持しながらいよいよ終盤戦に突入した。FC今治のいまについて、チームを追うライターの松本隆志がレポートする。
「10年後にJ1で優勝争いを」宣言からの歩み
悲願の瞬間は今季、ついにやってくるのか。
J3参戦5年目を迎えている今治は今季開幕4連勝で見事なスタートダッシュに成功。チームはその後、好不調の波を何度か繰り返しながらも夏場を前に一気に躍進へと転じると、自動昇格圏の2位へと浮上し、昇格への機運は俄然高まっている。
シーズンはここから佳境へと向かっていくが、チームは今治周辺の海域を含む瀬戸内海で活躍した村上海賊のごとく、さらなる大海原へ臨むべく挑戦に打ち勝つことができるか。
今治が大きく注目されるきっかけとなったのは2014年、元日本代表監督・岡田武史氏のクラブ代表への就任だった。
当時の今治は地域リーグに所属する愛媛の小さなクラブ。しかし、強烈なリーダーシップを発揮する岡田代表が「10年後にJ1で優勝争いを」と大きな夢を語ると、それらの言葉が耳目を集め、クラブはドラスティックに刷新。大転換期を迎えた。
ただし、ここまでの歩みは決して順風満帆なものではなかった。
破格の体制でリスタートを切ったチームはとんとん拍子でカテゴリーをステップアップしていくかと思われたが、四国リーグからJFLへの昇格に2年を要し、JFLでは3年足踏み。満を持してJの舞台へ上がるも最初の2年は昇格戦線に食い込むことができず、ここ2シーズンは終盤まで昇格の可能性を残していたものの、勝負どころで詰めの甘さが目立ち、続けて悔し涙を流した。
クラブはJ3参戦初年度よりリーグトップクラスの予算規模を誇り、それも年を追うごとにさらに増加。2023年にはサッカー専用スタジアム「今治里山スタジアム(現・アシックス里山スタジアム)」を自前で建設し、チームを取り巻く“戦う環境”は着実に整備されていった。
積極的な外国籍選手の招聘が裏目に
しかし、その一方で現場には焦りが見えていた。
「10年後にJ1で優勝争い」という夢の具現化への道のりはすでに遅れが生じていたがゆえ、足早にスターダムを駆け上がりたいクラブは外国籍選手を多く呼び寄せ、個の能力による力技でステップアップを試みるも、これが思うようにハマらなかった。……
Profile
松本 隆志
出版社勤務を経て2007年にフリーへ転身。2009年より愛媛FCを中心としたプロサッカークラブの取材活動を始める。サッカー専門紙エルゴラッソ、サッカーダイジェスト等へ寄稿。ライター業とともにフォトグラファーとしても活動する。