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多彩な選択肢でバーレーンの“6バック”を攻略。日本の[3-2-5]が示した熟成への道標【W杯アジア最終予選レビュー】

2024.09.12

ホームで完勝した中国代表戦に続き、敵地でのバーレーン代表戦でもゴールを重ねアジア最終予選を最高の形で滑り出した日本代表。ピッチ上で起こった現象を『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』の著者でありチーム森保の戦いを追い続けているらいかーると氏が分析する。

 中国に7-0と大勝した日本。同じグループの他2カードで初陣を白星で飾ったチームはバーレーンしかおらず、いきなり首位攻防戦を迎えることとなった。ブーイングにレーザーポインターでの阻害と完全アウェイである。

 W杯の過密日程に対応するためにはターンオーバーが必須であり、ラージグループの形成は特定の選手に依存し過ぎない体制の構築に繋がる。これまでの2次予選や親善試合ではターンオーバーを行い、呼んだ選手はほとんど起用する姿勢だった森保一監督。果たして最終予選ではどうするのか注目された中、バーレーン戦のスタメンは中国戦から久保建英と鎌田大地を入れ替えただけであった。つまり、最終予選はなりふり構わず、森保監督が考える最強の日本代表を示すことになるのであろう。ようやく日本の本気のスタメン、序列が明かされることになったという事実は、1つの転換点と言えるのではないか。

両ウイングバックの高い帰陣意識と攻撃時に目立った裏狙い

 恒例になっていた左サイドの放り込みから日本は試合を始める。なぜ左サイドに放り込むかは不明なので、誰かに聞いてきてほしい。空中戦の的役は過去を思い出せば中山雄太であることが多く時には上田綺世が左サイドに流れてこなすこともあったが、この試合では町田浩樹がその役割を務めている。

 バーレーンの配置は[4-4-2]で撤退守備だった。全員が自陣に戻り、サイドハーフが最終ラインに吸収されて“6バック”になることも多かった点が特徴だろう。攻撃時に[3-2-5]となってウイング化する日本のウイングバックに対してサイドハーフをぶつけてきたのは、配置の噛み合わせを重視していたことを意味している。また、ペナ幅を4バックで守ることができれば、ポケットへのランニングへも対応することができる算段になっている。

 バーレーンの守備の論理を見ていると、サイドハーフが日本の3バックの両脇にプレッシングをかける場面はイレギュラーなようだった。2トップで遠藤航+片方のCBを監視するのが彼らの準備した形だったのだろう。サイドハーフとSBのダブルチームで日本のサイド攻撃に対応したがっているように見え、ボールを運んでくる日本のCBにはセントラルハーフが出ていく約束事になっているようだった。……

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FIFAワールドカップバーレーン代表日本代表

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。

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