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7-0大勝のターニングポイントは先制後。明暗を分けた中国の変化と日本の対応力【W杯アジア最終予選レビュー】

2024.09.07

いよいよ幕を開けたワールドカップアジア最終予選で、初戦を大勝で飾り幸先良く滑り出した日本代表。前回の代表ウィークから新たに採り入れた3バックの練度、中国代表による日本対策とその成否を中心に、ピッチ上で起こった現象を『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』の著者でありチーム森保の戦いを追い続けているらいかーると氏が分析する。

 個人的な思い出を語らせてもらうと、footballistaで日本代表の試合を見て書くようになった始まりは、カタールワールドカップの最終予選であった。最初の試合はアウェイのサウジアラビア戦で、その試合での敗北が日本の[4-3-3]へのチャレンジと、守田英正、田中碧の抜擢に繋がっていった。あれから日本代表の多くの試合について見聞し、またも最終予選に戻ってきたことは、ほんの少しだけ感慨深いものがある。今日の相手は中国で、場所はお馴染みの埼玉スタジアム2○○2。

 中国の監督はブランコ・イバンコビッチ。前回の最終予選ではオマーンを率いて日本に初戦で黒星をつけ、失意の底に叩き落したことは記憶に新しいのではないだろうか。98年のフランスワールドカップで、日本対クロアチアのベンチにイバンコビッチがコーチとして座っていたことはさすがに記憶にはなかったけれども。

 ちょっとした機材トラブルを添える形で、最終予選はスタートした。中国のキックオフは、堂安律サイドを空中戦で狙うものだった。この試合で何度も繰り返される、高さの優位性を狙った形である。SBの高さ問題は内田篤人、長友佑都時代から繰り返されてきていて、超攻撃的な3バックを採用することで、この問題とあらためて向き合う可能性を示唆する最終予選の始まりでもあった。

[3-2-5]対[4-4-2]

 序盤の中国の奇襲を終えて、この試合で最も見られた局面が登場したのは3分以降だった。6月シリーズで試した[3-2-5]を継続する日本に対して、自陣から[4-4-2]で対抗する中国の噛み合わせで試合の本当の幕が開ける。

 中国の[4-4-2]の特徴をまずは整理していきたい。2トップは日本のセントラルハーフコンビを守備の基準点としていた。裏を返せば、日本の3バックは相手のプレッシングを受けることなくボールを持ち、ゆっくりと呼吸をすることができた。日本がサイドからの前進を試みると、中国はボールサイドに圧縮することによって、日本のプレーエリアを狭くすることを狙う。特に日本のウイングにはダブルチームで対応し、ライン間でボールを受けたい南野拓実や久保建英の周りにも選手を配置することに成功していた。

 中国のサイドハーフが背中で南野や久保を消し、ウイングバックにボールが出ればSBと連係する形は、日本の前進ルートを迷わせる形となる。スライドが間に合わない時はセントラルハーフやCBがサポートに寄ることで、日本の面々に時間とスペースを与えないように中国は愚直に取り組むことができていた。

 3バックが自由に振る舞うことができる日本は、両脇のCBがウイングとインサイドハーフの後方支援役となるめぐり合わせとなった。ただし、序盤も序盤のため、日本の[3-2-5]に配置された選手たちは、各々に定められたスタート位置を遵守する形となる。序盤は町田浩樹から三笘薫へのシンプルな形が目立ち、三笘の突破、南野のダブルチームの隙間と裏抜けサポート、上田を3人目とする形で左サイドの攻略を狙っているようだった。

 右サイドを観察していると、久保が大外にいる場面が多くなっていく。東京オリンピックの遺産である久保と堂安で大外レーンと内側レーンを共有する形だ。サイドハーフが内側レーンを背中で消してくるならば、サイドハーフに守備の基準点を与えることでサイドハーフを動かしてしまえばいい。ライン間から手前へ移動する久保によって、中国の右サイドの守備タスクはだんだんと狂いを見せるようになっていく。相手にダブルチームを組ませない堂安と久保のコンビネーションは、結果として久保のサイドアタックを解き放つようになっていく。……

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ワールドカップ中国代表日本代表

Profile

らいかーると

昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。

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