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J1昇格→J1定着→ルヴァン杯獲得&J1過去最高順位→???。アビスパ福岡 ・柳田伸明強化部長インタビュー(前編)

2024.07.01

アビスパ福岡のチーム強化が順調だ。20年に長谷部茂利監督が就任すると就任1年目でJ1昇格を達成、その後J1に定着すると、23年にはルヴァンカップ獲得およびJ1での過去最高順位を記録した。長谷部アビスパは順調な成長曲線を描いているが、そもそもチームを強化するためにどのようなビジョンを描き、立ち振る舞ってきたのか。長谷部監督の招聘に関わり、その後のチーム強化を陣頭する柳田伸明強化部長に話を聞いた。

キーマンである長谷部茂利監督の招聘理由とは

――柳田さんが福岡の強化部長に就任されたのが2019年ですね?

 「そうです、19年の11月です。現在アビスパ福岡の副社長であり、ベルギーのシントトロイデンのCEOを務める立石敬之さんが、私が強化部長に就任するのとほぼ同時期にアビスパ福岡の経営顧問に就任されました。立石さんと私は大分トリニータで立石さんが強化部長、私が強化スタッフという間柄。詳しく言えば、もっと前からの知り合いでしたが、その立石さんが経営顧問に就任された時に私の強化部長就任を薦めていただきました」

――では翌年20年の強化に関しては柳田部長が中心となって進めたということでよろしいかと思いますので、まずは当時のクラブの状況とそれに沿った強化方針がどのようなものだったかを教えてください。

 「20年のJ2リーグにおいて『絶対に』J1への昇格を果たすこと。それはクラブが作成したロードマップの第1ステップである『J1定着』の実現に向けて、まずは果たさなければならない目標でした。そのJ1昇格という目標を達成するためにまずはわれわれ強化部が着手したのが監督選びでした」

――20年から指揮を執ったのは長谷部茂利監督です。クラブの歴史を大きく塗り替えていくキーマンとなる長谷部監督をなぜ選んだのでしょうか?

 「J2リーグは特殊なリーグであり、優勝、上位進出をするのが難しいリーグです。そういう認識がある中で、われわれは『J2リーグを知っているかどうか』を監督選定の重要なポイントに挙げました。さらに、20年のJ2リーグは22チームで戦うので1シーズンで42試合、その長丁場の戦いの中でいかに安定的な成績を出せるのか、そのチームマネジメント能力も重要視していました。またクラブと、クラブのビジョンに沿って強化方針をつくる私たちとともに歩むことができる、クラブのニーズに応える、クラブの状況を理解した上で指揮を執っていただける。この3つが監督選定の大きな基準になりました。そしてJ2リーグにおいて、ある程度の結果を出し、できるなら若い監督をという視点も加えて探した結果、長谷部監督にオファーを出すことになったのです」

――20年の選手強化の方針はどのようなものでしたか?

 「監督選びと同じように、まずはJ2でのプレー経験とそこでの実績があるかどうかを重要視しました。同時に長谷部監督のサッカーを知っているかどうかも大事だと考えたので、GK村上昌謙、MF前寛之、福満隆貴ら水戸で長谷部監督の下でプレーしていた選手も獲得しました。あとはJ1で、才能はあるけれども出場機会が恵まれていない増山朝陽や上島拓巳、それから遠野大弥はHonda FCから川崎フロンターレで加入したばかりでしたが、プロ1年目は出場機会を求めて福岡でということで、期限付き移籍で来てもらうことになりました。したがって監督の招聘と選手の獲得はクラブのビジョンに沿って決めた、というのが20年の状況です」

――長谷部監督率いる現在のチームスタイルは、堅守をベースに、個の力というよりもグループとしての連動性やチームの一体感を重視したものになっています。そうしたスタイルもクラブが順調にロードマップを進んでいく上で必要だとの考えで決めたのでしょうか?……

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島田 徹

島田徹(しまだ・とおる)/広告代理店勤務の後、1997年にベースボール・マガジン社に転職。サッカーマガジン編集部、ワールドサッカーマガジン編集部で2006年まで勤務した後、07年より福岡にてフリー活動を開始。サッカーマガジン時代に担当を務めたアビスパ福岡とギラヴァンツ北九州をメインに、ほぼサッカーの仕事だけで生きつなぐ。現在はエルゴラッソの福岡&北九州を担当。

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