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デ・ロッシ監督のチェックリストは終わらない。ローマの未来を託された「本物」が感じる「今」

2024.05.02

4月18日、ローマはダニエレ・デ・ロッシ監督の来季続投を発表した。その約3カ月前に前任者ジョゼ・モウリーニョの解任を受けて結ばれた当初の契約期間は、あくまでも「暫定」の今季終了まで。そこから20戦13勝4分3敗、セリエAで欧州カップ戦出場圏内の5位、ELでは4強に勝ち上がるまで古巣を立て直した「本物」として、現役時代に続きその未来を託されているバンディエラの手腕を『ASローマ速報』の管理人、如月たくみ氏に評価してもらった。

「本物の監督として扱われたい」。火消し役、橋渡し役への反発

 かつてのレジェンドプレーヤーたちが監督として古巣に帰りピッチサイドに立つ。そんな場面をイタリアではしばしば見かけるようになってきた。しかし、ユニフォームからジャケットに着替えた彼らが、全員現役時代同様に多くのトロフィーを掲げたのかと言えば残念ながらそうではない。

 古くは2013-14シーズン、FFP(ファイナンシャル・フェアプレー)導入に伴う財政立て直しを強いられたミランが、クラレンス・セードルフの監督就任を発表した。しかし、カンピオナート8位の成績を受けて解任。翌シーズンには、フィリポ・インザーギを指揮官に招いたが、それでもチームを立て直すことはできなかった。2017年には、ジェンナーロ・ガットゥーゾをプリマベーラの指揮官から昇格させて、リンギオ(闘犬)の闘魂を注入しようと試みたが、CL出場を逃す5位で終えてチームを去っている。

 2020年8月、ユベントスはマウリツィオ・サッリを更迭して、下部組織を率いる予定だったアンドレア・ピルロをトップチームの監督に引き上げているが、残念ながらこの起用も上手くはいかず、セリエA10連覇を逃している。

ユベントスでの監督解任後は、翌21-22シーズンにトルコ1部のファティ・カラギュムリュクを指揮するも契約期間の1年を戦い切る前に退任したピルロ。現在はイタリアで再浮上を図っており、今季から率いるサンプドリアはセリエB第36節を終えて昇格プレーオフ圏内の7位につけている

 彼らが呼ばれたのは、決して指導者としての技量だけが理由ではない。彼らはみな、クラブのフィロソフィ、アイデンティティの伝道師として呼ばれ、失われた『勝者のメンタリティ』を取り戻す使命を負っていた。欧州経済危機の余波を受けて財政難に陥ったミラン、2017年から赤字決算の続くユベントスにとって、監督キャリアの萌芽期にいる彼らの年俸はリーズナブルだった。

 そして、ローマもかつてのバンディエラにチームの手綱を預ける時がやってきた。2024年1月10日、名将ジョゼ・モウリーニョ率いるローマは、コッパ・イタリアの準決勝でラツィオとのダービーに敗れ、4日後のセリエA第20節ミラン戦でも大敗を喫する。この2つの大きな敗戦を受けて、オーナーのダン・フリードキンオーナーはポルトガル人指揮官の解任を決定した。のちにモウリーニョは「サッカーを知らない人物にローマから追い出された」と非難したが、決別のニュースが世界を駆け巡っている数時間後に、クラブの象徴的選手だったダニエレ・デ・ロッシの新監督就任を発表したのだから、フリードキンが仮にサッカーを知らなかったとしても、炎上を最小限にとどめる方法は知っていたと言えるだろう。

 もちろんデ・ロッシも、インザーギやピルロ同様、監督としての手腕が評価されて古巣に呼び戻されたのではない。2022-23シーズン途中には初めて率いた当時セリエBのSPALを16戦3勝の不振で降格圏の18位に落とし、わずか4カ月間足らずで契約解除と、幸先の悪いセカンドキャリアを歩み始めたばかりだった。ローマにとってモウリーニョの代役を任せるのは大きな賭けだったに違いない。しかし、その先任によってこじれたロッカールームにロマニズモを取り戻すには元カピターノの力が必要だと考えた。とはいえ最初の契約は延長オプションなしの今シーズン終了まで。つまり、デ・ロッシを来季は別の監督を招へいするための橋渡し役として考えていたに違いない。

 「セリエBで(監督)キャリアをスタートした時、インタビューはすべて『現役時代、W杯優勝経験を持つ~』で始まった。誰もが俺を元サッカー選手としか見ていなかったし、監督としての結果も、あまり触れる意味のないものだったのだろうね。でも監督として評価してもらえるローマという強いチームと出会った。だから俺は今ここを辞めたくはない。まだやるべきことはたくさんあるんだ。負け試合の後には批判が来るだろうが、俺はそれを歓迎している。ローマでキャリアを過ごしたからといって、チヤホヤされたくないんだよ。本物の監督として扱われたいんだ」(デ・ロッシ)……

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アンドレア・ピルロダニエレ・デ・ロッシパウロ・ディバラローマ

Profile

如月 たくみ

2004年から続くASローマ情報サイト『ASローマ速報』管理人で、2022年にローマ来日に合わせて設立された公認ファンクラブ「ROMA CLUB TOKYO」の会長を務める。現在はJリーグ入りを目指すサッカークラブ南葛SCで広報、運営として働いている。自著にトッティのラストシーズンを綴ったkindle電子書籍『ローマ速報オフライン』がある。【WEB】ASローマ速報〜ROMANISMO | 2004年からローマの魅力を伝えるロマニスタサイト(asromasokuhou.com) 【Twitter】如月【ASローマ速報⚡ROMANISMO official】(@roma_sokuhou)

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