元ドイツ代表のシュテファン・ライナルツとイェンス・ヘゲラーの2人が開発したことでも注目を集めたデータ分析の新たな指標パッキング・レート。この指標、現状では「1本のパスで何人の相手選手を通過することができたか」を示すものだと理解されているが、実は複数のデータを用いたより体系的なコンセプトなのだという。“パッキング”が実際にどのような形でデータ化され提供されているのか。開発したIMPECT社のLucas Keppler氏に語ってもらった。
パスだけでは不十分。ヴィッセルとF・マリノスの違い
――長時間のフライト直後にもかかわらずお時間をいただきありがとうございます。最初に、今回の来日の目的について聞かせてください。
「私たちはすでに10年間活動をしており、現在ではバイエルンやアーセナルなど80以上のクラブにデータの提供を行っています。日本ではヴィッセル神戸と契約しているのですが、今まではJ1のみを対象としていたデータの収集範囲をJ2まで拡大したことを受けて、IMPECTの認知を広げるとともにパートナーを増やすことを目的として来日しました」
――IMPECTが扱うデータと言えばパッキング・レートが代表的という印象なのですが、いったいどういったデータを提供されているのでしょうか? パッキング・レート以外にも画期的なデータがあったりするのでしょうか?
「パッキングに関して、多くの方に誤解をされているのですが、パッキングというのはある1つの指標を指すものではなく、サッカーを分析するためのアイディア、コンセプトのことです。パスやクロス、インターセプトにxGも含めた様々な既存のデータも用いてより効果的なアクションを評価するものであり、一般的にパッキング・レート(1本のパスで何人の相手選手を通過することができたか)と認識されているデータは“Bypassed Opponents”と呼ばれるもので、あくまでその中の指標、KPIの1つに過ぎません」
――そうなんですか。それは初耳でした。
「2016年にドイツメディアで紹介されたのですが、その時もやはりパスによって何人の選手を置き去りにすることができたかがパッキングであるという取り上げられ方をされたので、無理もないです。……
Profile
久保 佑一郎
1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。