J1上位に進出した経験も持つベガルタ仙台だが、近年はJ2でも低迷を余儀なくされている。昨季は16位という結果に終わった中で、U-17日本代表監督を務めた森山佳郎氏を招へい。立て直しを託すこととなった。そんな仙台の沖縄キャンプを取材した池田タツ(MCタツ)氏が目にしたのは、笑顔で激しく追い込まれる選手たちだった……。
謎のハイテンション練習
「なんかめっちゃ楽しそう(笑)」
沖縄で行われたベガルタ仙台の1次キャンプを取材させてもらっての第一印象だ。
練習場に出てくる時から選手たちは明るくコミュニケーションを取っており、実に賑やか。練習が始まっても、本質的にその雰囲気は変わらなかった。前日に取材していた某J1クラブはかなり静かだったからこそ、違いに余計に驚いたのかもしれない。
もちろん、どちらの雰囲気が良い・悪いといった単純な話ではない。そのJ1のチームも緊張感があり、ストイックさがびんびんと伝わってくる質の高さを感じた。一方、仙台の練習の場合は声がよく出ており、練習中でも笑顔かつ笑い声がしばしばこぼれる。
では、仙台はお気楽な練習内容なのかというと、そうではない。むしろ、かなり激しい。そこでは、J1チームに負けず劣らずの高いインテンシティの練習が続いていた。切り替えの早さ、寄せの距離と強さ、足同士がぶつかる激しい音が何度も響く。それでも、笑顔なのだ。
さすがに今のは痛いだろうというシーンもあるが、選手たちは痛がって倒れたりはしない。なんというか、「ハイテンション笑顔アドレナリン」でも分泌されているのではないかという感じだ。体同士がぶつかると、むしろどんどんテンションが上がっていくのがサッカーだが、仙台の場合はそこに「笑顔」まで伴っているのが特徴的だった。見ていて、「ちょっとこの人たち大丈夫だろうか(笑)」という気にさえなってきた。
楽しく疲れ切った選手たち
この練習の雰囲気は、今季から仙台で指揮を執ることになった森山佳郎監督の仕業だろう。間違いない。森山監督は練習中もインターバルでも、明るい声をかけ続ける。ジョークも織り交ぜて、選手たちのテンションを上げていく。
第一印象で「楽しそう」と感じたものの、このハイテンション&ハイインテンシティが練習中ずっと右肩上がりで続いていくからなのだが、どう考えても「楽しいだけ」のはずはない。パッと見の印象に騙されてはいけない。体力的には相当な負荷がかかっているのも明らかだった。
今季を前に川崎フロンターレから期限付き移籍加入したMF名願斗哉に森山監督の練習の負荷について聞いてみると、「本当につらい」と疲れ切っている様子ながら、しかし笑顔で返してきた。……
Profile
池田 タツ
1980年、ニューヨーク生まれ。株式会社スクワッド、株式会社フロムワンを経て2016年に独立する。スポーツの文字コンテンツの編集、ライティング、生放送番組のプロデュース、制作、司会もする。湘南ベルマーレの水谷尚人社長との共著に『たのしめてるか。2016フロントの戦い』がある。