クラブ史上初めてJ3降格となった大宮アルディージャ。ファジアーノ岡山、FC東京U-23などを率いた経験を持つ長澤徹新監督を迎え、まずは沖縄キャンプでチームの土台を整えた。2月1日に沖縄県のタピック県総ひやごんスタジアムにて行われたトレーニングを取材した池田タツ(MCタツ)氏が、長澤監督、そして今季のキーマンを直撃した。成功のカギは「要塞」にあり……?
大宮は「甘え」ているのか?
「ゲームが面白くて、(時間が)伸びちゃいましたね」
キャンプ初日の練習を終えた大宮の長澤徹新監督は、そう言って微笑んだ。
「キャンプ初日で移動があっても、走れるかどうかは意志の問題。そこは確認できた」
キャンプ初日のトレーニングから、ランニングのみで終えずにミニゲームを実施。新監督が注入したエッセンスは、そのミニゲームから随所に現れていた。
ここ5年ほど大宮アルディージャの沖縄キャンプを取材している筆者だが、キャンプ初日にしてここまで強度の高いミニゲームを見たのは初めてのこと。しかも、選手もコーチもとにかく声が出ていて活気があったのも印象的だ。
シーズン前だから当たり前と思われるかもしれないが、その「当たり前」がこのクラブではないこともしばしばあった。
「去年、クラブはつらい思いをした。画面で見たり、人から聞いてみたりしていても、実際に見てみないとわからない。でもここに来て、このチームに残った選手や、新しくこのチームに来た選手など、みんなこのクラブでやることの覚悟が決まっていると感じられた」(長澤監督)
大宮アルディージャには立派なクラブハウスがあり、練習場も手入れされた見事な天然芝である。しかし、設備に見合う結果が出ないことで、そうした恵まれた環境が「チームの甘さ」に繋がっていると言及されることが珍しくない。
それはメディアから発されるものに限らず、クラブに関わる選手、監督、フロントなどからもこぼれる言葉だ。ただ、長澤監督は実際に大宮に来て指導した上で、「甘さ」についての批判を一蹴する。
「降格したチームがそう言われてしまうのはよくあること。そもそも厳しさというのは自分の内側から出るもので、人から言われて強制されてやっても、強制してくれた人がいなくなったらやらなくなってしまう。このチームに来た時点で、みんな『自分でやる』という覚悟はできている。そこは心配していない。みんなで立ち向かっていくだけ」
そう力強く断じた上で、こうも続ける。
「ただ、本当に悪い状況に陥ったと時に今のようにできるかどうか。チーム始動からの2週間でプレー原則についてはやってきたので、悪い時期がきたとしても、そこを軸に戦っていきたい」
強度で殴り、質で刺す
一方、自分たちに「甘えがない」と言っても、待っているのが甘い戦いだとは微塵も思っていないのが長澤監督だ。ファジアーノ岡山を率いて、クラブを初の昇格プレーオフ進出にも導いた実績がある新指揮官だが、2019年にはFC東京U-23を率いてJ3リーグを1年間にわたって戦った経験もある。つまり、J3の厳しさをよく知っている監督でもあるのだ。……
Profile
池田 タツ
1980年、ニューヨーク生まれ。株式会社スクワッド、株式会社フロムワンを経て2016年に独立する。スポーツの文字コンテンツの編集、ライティング、生放送番組のプロデュース、制作、司会もする。湘南ベルマーレの水谷尚人社長との共著に『たのしめてるか。2016フロントの戦い』がある。