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今やインテルは“売り上手”で“持続可能”に。テュラムら新戦力もヒット連発の前半戦を総括する

2024.01.25

シモーネ・インザーギ体制2年目の昨季にCLファイナリストとなったインテルが今季も好調を維持している。CLでは3季連続のグループステージ突破を決め、セリエAでは1試合未消化ながら首位と勝ち点1差の2位と、20-21シーズン以来のスクデット奪還に向けて前進中だ。その前半戦を夏のメルカートで獲得した12選手の貢献度を評価しながら、インテリスタの白面氏が総括する。

 23-24シーズン、インテルの歩みが堅調だ。シモーネ・インザーギ政権3年目を迎えた今季の戦いぶりは、過去2シーズンの試行錯誤が目立ったそれとは異なり、ぐっと円熟味を増したものとなっている。

 好調の要因はいくつかあるが、印象的な部分に絞って言及するとすれば以下の3点だろうか。

①ヒットを飛ばす選手売却の錬金術
②安定・継続性重視。費用対効果抜群の選手獲得メソッド
③選手循環と指揮官のマネジメントがもたらす健全なチーム内競争

 スクデット奪還、ビッグイアー再挑戦に燃える、今季のインテルを紐解いてみよう。

「移籍市場でのみ主役」と揶揄された過去からの脱却

 オーナーである蘇寧グループが抱えた巨額の負債もなんのその。今季のみならず、ここ数年の堅調を支える要因として、「スカッドは入れ替わりを伴うもの」という前提に立つ、理に適った選手売却に触れないわけにはいかない。

 2021年夏のアクラフ・ハキミとロメル・ルカク、昨夏のアンドレ・オナナやマルセロ・ブロゾビッチらの売却といった動きからは、クラブが現在置かれている状況と、過去に犯した失敗を繰り返したくないという意図が明確に見えてくる。補強戦略に関するインテルの現状をざっくばらんにまとめるなら、以下の6点が挙げられる。確かなことは明確な指針を立てて行動し、それが機能しているということだ。

インテル時代のハキミ。在籍したのは1シーズンのみだったが、その中で7ゴール10アシストと大きなインパクトを残した

①オークツリー・キャピタルから受けている約370億円の融資&その返済が示す資金難
②過去の失敗(ミラン・シュクリニアル、ルカクらとの契約延長破談)を繰り返さない、先手重視の延長交渉or放出準備
③厳選された中心選手(ラウタロ・マルティネス、ニコロ・バレッラ他)との契約延長に対する、惜しみない資金投入に伴う競争力の維持
④稼働率が低下し代役確保の目処が立った選手に対する、費用対効果優先の交渉姿勢
⑤名よりも質重視なボスマンプレーヤー(フリー移籍)の有効活用
⑥フリーから大物獲得まで、各種交渉を有利にするクラブの環境整備&評判上昇

 このうち4にあたる、戦力低下を恐れない積極的な選手売却は、インテル・ミラノというクラブの伝統を考えると、最もドラスティックに変化した部分と言っていい。かつては「移籍市場でのみ主役」と揶揄されたほど、偏った選手補強やスター選手の保有に固執し、過ちを重ねてきた歴史があるからだ。 

 選手売却に関する失敗の最たる例は、マッシモ・モラッティ会長時代、CLをはじめとした3冠獲得後の凋落だろう。年俸や平均年齢の高さ、加えて所属全選手を寵愛するモラッティ前会長の人柄もあり、クラブは世代交代に失敗。それ以降クラブは長らくCLから遠ざかることとなり、オーナーをモラッティ→エリック・トヒル→蘇寧グループと2度も交代する事態へと繋がっている。

 近年で言えば、放出&契約延長のタイミングを逸した、シュクリニアル(現パリ・サンジェルマン)を巡る移籍劇が記憶に新しい。契約残り1年を迎えた2022年の夏、一時はパリSG移籍が濃厚とされたものの、最終的には残留へ。しかし契約延長交渉が決裂し、2023年の夏に移籍金0円でパリSGのユニフォームに袖を通すこととなった。

 1つ確かなことは、インテルがこうした数々の失敗を経て、「アンタッチャブルな選手などいない、誰しもに別れの可能性がある」という教訓を得たことだ。これにクラブの財政状況も影響し、現在のような体制に至ったと考えられる。

 何はともあれ、今のインテルはいい意味で情に流されることがない。シーズン中に主力級の働きを披露した選手であっても、売り時と見るや迅速に交渉をまとめる。すっかり「売り上手」と化したインテルの様子は、往年のカルチョファンの目には隔世の感をもって映ることだろう。

 一切の移籍金をかけずに獲得したオナナ(現マンチェスター・ユナイテッド)を、推定5000万ユーロ(約80億円)の移籍金で売却に至ったケースがその典型で、クラブの運命を変えるレベルのビッグヒットを生み出したピエロ・アウジリオSD(スポーツディレクター)他、フロント陣の動きは見事と言える。

夏の新戦力採点。最高評価は15得点関与のテュラム

 続いては今季の新加入組について言及していこう。

 今回は獲得にかかった費用や出場時間、貢献度や今後の期待値などを総合的に考え、各人のここまでの歩みを筆者が振り返ってみた。実質完全移籍前提のレンタル加入組も同じように扱い、逆にレンタルバックで過去にインテルでのプレー経験がある面々(ステファーノ・センシら)はここに含まないとした上で、以下が採点(10点満点)と寸評である。

Pos 名前 採点
GK ヤン・ゾマー 7.5
GK エミル・アウデロ
GK ラファエレ・ディ・ジェンナーロ
DF ヤン・アウレル・ビセック 7.0
DF カルロス・アウグスト 7.0
DF バンジャマン・パバール 6.5
DF フアン・クアドラード 5.0
MF ダビデ・フラッテージ 6.5
MF デイビー・クラーセン 5.0
FW マルクス・テュラム 8.0
FW マルコ・アルナウトビッチ 5.5
FW アレクシス・サンチェス 5.0

 ポジション別に印象的な選手を中心に見ていこう。まずGKだが、加入直後から正守護神に抜擢されたゾマーが、後述するテュラムと並んで素晴らしいヒットとなった。

 今季の好調な要因の1つに守備組織の整備が挙げられるが、この点において彼の貢献度は計り知れない。特筆すべきはシュートストッパーとしてのクオリティの高さで、ポジショニングと判断の正確性なら現在のカルチョでも随一だろう。昨季に比べて1試合あたりの失点数は、リーグ戦20試合で1.3(計26失点)から0.5(計10失点)へと激減。ゾマーは前任者であるオナナとは異なる魅力で、インテリスタの心をわしづかみにした。

昨年12月に35歳を迎えながらも再び評価を高めている新守護神ゾマー

 残る2人は、出場機会が圧倒的に少な過ぎるため評価の対象外としている。アウデロ(27歳)とディ・ジェンナーロ(30歳)はともにGKとしてはまだ若く、後者に関しては育成枠での雇用が可能ということもあり、限られた予算内で費用対効果の高い両名をそろえたという印象だ。……

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インテルダビデ・フラッテージバンジャマン・パバールマルクス・テュラムヤン・ゾマー

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白面

集団心理とか、意思決定のノウハウ研究とかしています。昔はコミケで「長友志」とか出してました。インテルの長所も短所も愛でて13年、今のノルマは家探しです。

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