※『フットボリスタ第99号』より掲載。
自陣でのビルドアップの目的がボールを相手ゴールに近づけることだとすれば、その「前進」におけるシンプルな方法の一つがワンツーだ。多くの場合、ビルドアップでは正確性の高いショートパスでボールを動かしながら、最終的に前進するタイミングを見極めている。味方が前線でフリーになっている時にボールホルダーに余裕があればロングキックが選択され、ボールホルダーの前に広いスペースがあればドリブルで持ち運ぶはずだ。
その過程でも多用されるワンツーは、ボールを保持する選手が味方にボールを預け、そのまま縦にフリーラン、受けた選手が少ないタッチでスペースに走った選手にボールを返すことで成立する。ダイレクトパスになることが多く、シンプルでありながら選手間の相互理解を必要とするプレーだ。
これを統計データから分類する時、ボールを出した選手が次にボールを受けるプレーがワンツーとなる。しかし、それだけでは十分ではない。例えばCBが横パスを繋ぐようなプレーもカウントされてしまうからだ。そこで、統計データを専門とする『Soccerment』はワンツーを次のように定義した。パスを出した選手がゴールもしくはゴールラインに近づくパス交換であること。また、最初のパスと次のパスは「4秒以内」とする。
南米の“Toco y me voy”と“Tabela”
こうして分析されたワンツーが示したのは、通常のプレーよりも得点に繋がりやすいという事実だ。多くがサイドのゾーンでトライされているとともに、ファイナルサードでのワンツーにおける「リターンするパス」は2.8%がキーパス(シュートを成功させる可能性が高いパス)になっていた。同エリアで通常のパスがキーパスになる確率が1.5%であることを考えれば、ワンツーは効果的な崩しの手段と言える。
また、ワンツーの成立後に選択されるパスがキーパスになる確率は11.7%だった。想像しやすいかもしれないが、サイドをワンツーで突破した選手がそのままセンタリングを上げ、それが決定機を生むことは少なくない。
リーグ別のワンツー比較も面白い。世界主要17リーグの直近3シーズン(20-21~22-23)で集計した1試合あたりのワンツー回数では、トルコ1部リーグが平均5.58回でトップ。2位は「リレーショナルプレー」という概念が再注目されているブラジル1部リーグで5.47回だった。
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Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。