11月18日、U-22日本代表はサッカー王国・静岡にて世界王者を迎え撃つ。来夏に開催されるパリ五輪を目指して活動してきた“大岩ジャパン”が初めて国内で実施する国際親善試合だ。相手は五輪の南米予選を目前に控え、ほぼベストメンバーで来日してきたU-22アルゼンチン代表。誰が見ても不足なしの相手との試合に向けて、日本側の注目ポイントを整理してみたい。
パリ五輪へ、「ここまでのあらすじ」
さあ、いよいよ大岩ジャパンの国内初お披露目だ! 大岩剛監督率いるU-22日本代表が18日、U-22アルゼンチン代表と激突する。
ここまで長かった……。来年夏のパリ五輪を目指して発足したこのチームが発足してから1年8カ月。初めて国内で国際試合を戦うこととなる。ずっと海外で活動していたせいか、取材している者からすると今一つ注目度が低い気がしてしまっていた。そんなチームの国内初お披露目の相手が現世界王者のアルゼンチン。相手にとって不足なし。存分に注目していただきたい。
このゲームは、大岩ジャパンにとって2023年最後の対外試合でもある。いわば、2023年の集大成をお披露目する場でもあるのだ。だからこそこのチームを継続して取材してきた者として、このアルゼンチン戦での注目ポイントを2つ挙げておきたい。
①藤田譲瑠チマのリーダーシップ
②リザーブドッグスの突き上げ
上記2つのポイントについて詳しく記していきたいのだが、その前提として、まずは2023年の大岩ジャパンの活動を振り返っておこう。
2023年の大岩ジャパンのミッションは、パリ五輪1次予選の突破だった。そこに向けて3月、6月と欧州遠征で強化を図り、3月はドイツに1-1で引き分け、ベルギーに2-3で敗れた。6月はイングランドに2-0で勝ち、オランダとは0-0で引き分けている。昨年の欧州遠征も含め、ヨーロッパの強豪相手の試合では、もちろん課題は出たものの、内容・結果ともに悪いものではなかった。
6月のイングランド遠征が海外に行くこと自体初めてだったMF平河悠(FC町田ゼルビア)も、世界トップレベルのタレント軍団相手に対人プレーで「攻守においてそこは出せた」と手応えを口にしていたほどだ。ちなみに、このとき平河は海外遠征を想定しておらず、パスポートの手配がギリギリになったそうである。
迎えた9月のパリ五輪1次予選(AFC U23アジアカップカタール2024予選)は、中東の島国バーレーンで行われた。
パリ五輪の出場条件は、来年4月にカタールで行われるAFC U23アジアカップで3位以上に入るか、4位となってアフリカとのプレーオフで勝利を収めること。この1次予選は、その前提となるU23アジアカップへの出場権を手にするためのものだ。
対戦形式は日本、バーレーン、パレスチナ、パキスタンの4カ国による1回戦総当たり方式。年代別代表の大会は、中2日の3連戦が通例で、たまたま過密スケジュールだったのではなく、スタンダードだ。五輪本大会も同様に中2日ベースでの連戦である。
さらに「30m歩くだけでも手が汗でベトベトに。選手たちも『自分史上一番暑い』と話していた」と大岩監督が言うほどのバーレーンの酷暑がチームを苦しめた。そんな過酷な環境の中で難しい試合も続いたが、結果は見事に1位突破。今年最大のミッションを果たしてみせた。
1次予選を突破したチームは、直後に中国の杭州で行われた第19回アジア競技大会に参加。1次予選を戦った選手とは完全に別の選手23名を新たに招集して大会に臨んだ。Jリーグ開催期間中とあって半数近くが大学生だったが、見事に決勝まで勝ち上がり、銀メダルを獲得して大会を終えている。
この1次予選、アジア競技大会と続いたアジア勢との戦いを終えた後、10月にはアメリカ遠征を実施。メキシコ、アメリカと親善試合を行っている。欧州勢以外と親善試合をするのはこの遠征が初。結果はメキシコには4-1で勝ったものの、アメリカには1-4で敗れた。内容的にもここまで一方的な形でやられたのは初めてのこと。上述したように、どんな欧州の強豪相手にも一方的にやられることはなかったが、アメリカ相手には接戦に持ち込むこともできず、課題を大きく残す結果となった。
以上の流れを経て、11月18日にIAIスタジアム日本平でアルゼンチンと戦う。その前提をもってここからアルゼンチン戦の注目ポイント2つを掘り下げていきたい。
ポイント①藤田譲瑠チマのリーダーシップ
……
Profile
池田 タツ
1980年、ニューヨーク生まれ。株式会社スクワッド、株式会社フロムワンを経て2016年に独立する。スポーツの文字コンテンツの編集、ライティング、生放送番組のプロデュース、制作、司会もする。湘南ベルマーレの水谷尚人社長との共著に『たのしめてるか。2016フロントの戦い』がある。