2023-24シーズンのブンデスリーガ前半戦でサプライズチームとなっているのがシュツットガルトだ。一昨期は15位、昨季は16位で昇降格プレーオフの末に残留と苦しんでいたうえ、開幕後に中心選手だった遠藤航を放出したにもかかわらず3位と躍動。リーグ2位の15ゴールを挙げるセール・ギラシに注目が集まるが、それだけではないチームの戦術面についてとんとん氏が分析する。
2023年夏、中心選手だった遠藤航がリバプールへと旅立ったシュツットガルト。チームを牽引し降格の危機から救う活躍を見せた日本代表MFの移籍は、ここ2シーズン残留争いに巻き込まれてきたシュツットガルトにとって大きな痛手になるかと思われた。
ところが、そんな心配を吹き飛ばすように2023-24シーズンのチームは開幕から好調を維持。第10節を終えて3位と、堂々たる順位につけている。
好調の要因の1つは、出場9試合で15ゴールとロケットスタートを切ったギニア代表FWセール・ギラシの存在だ。46分に1点のペースでゴールを量産するCFの存在は、チームに欠かすことができない。
しかしながら、彼の覚醒だけでは好調の要因を説明するのには不十分だ。彼は昨季もシュツットガルトに在籍しており、22試合で11ゴールと文句なしの結果を出していた。
ではシュツットガルト好調の、ギラシ以外の要因はどこにあるのだろうか?
ヘーネス就任後の戦術的変化
現監督セバスティアン・ヘーネスが指揮を執るようになったのは、昨季の第27節から。それまでのシュツットガルトは直近12試合で1勝3分8敗、獲得した勝ち点わずか6と危機的状況に陥っていた。しかし、ヘーネス就任後の8試合で3勝4分1敗、勝ち点13と完全に生まれ変わった。
バイエルンの名誉会長ウリ・ヘーネスの甥にあたる41歳の若手指揮官就任後のパフォーマンス向上がいわゆる「解任ブースト」ではないことは、今季の順位と内容が証明している。
ヘーネスは[4-2-3-1]をベースに、丁寧にパスを繋いで前進していくサッカーを志向。シュート数、ショートパス本数、ポゼッション率、得点数はいずれもリーグ3位と上位に位置している。ちなみに、上にいるのは順位でも上の王者バイエルンと今季覚醒したレバークーゼンである。……
Profile
とんとん
1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。