11月から始まる2026年W杯アジア予選前最後の親善試合に臨む日本代表。その1戦目となったカナダ代表戦は前半だけで3得点を奪い4-1で勝利を収めたが、内容面では少なからず苦戦する場面も見られるゲームだった。苦しんだ部分とその要因を、『森保JAPAN戦術レポート 大国撃破へのシナリオとベスト8の壁に挑んだ記録』の著者らいかーると氏が分析する。
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初手から代表に復帰した中山雄太に放り込む日本の姿勢が印象に残った。久々に代表に復活した中山に気を使ったのか、それともイングランドの地でフィジカルが強化されたであろう中山のお披露目だったのか、カナダの右サイドが空中戦に弱かったために行われたプレーなのかは謎である。
そのキックオフから仕込まれた“セットプレー”によってずれた配置のまま試合が進んでいき、アルフォンソ・デイビスが南野に簡単に裏を取られたうえ、チームでボールを奪い返したものの緩慢なプレーで再びボールを奪われた流れから、日本が早々に先制する試合となった。
守備の基準点設定に苦慮
日本のボール保持は[4-3-3]で非保持は[4-1-4-1]。特徴として、南野はビルドアップにあまり関わらないが、田中碧は頻繁に関わっている印象が強い。左右非対称な配置ではなく、“左右非対称な役割”と言えるだろう。
対するカナダのプレッシング配置は[5-3-2]。ただし、ハーフラインをプレッシング開始ラインに設定しており、日本のCBがプレッシャーを受けながらのビルドアップを回避できるかみ合わせとなった。加えて、相手の配置とのかみ合わせによって日本のSBも時間とスペースを得ることができていた。ただし、左に関しては中山と田中碧のプレーエリアが重なる場面が多かった。
日本のゴールキックに対して、カナダは高い位置からプレッシングを行う。アンカーのように振る舞う遠藤航にマンマーク要員を準備することで、高い位置からのプレッシングを可能としていた。日本はGK大迫敬介がボールを持ってじっとしたり、サイドからの展開を狙ったりするが、ロングボールを収めてくれそうな前線の選手がおらず、空白エリアを利用したゴールキックからのビルドアップは厳しそうな雰囲気だった。
先制してからも日本がボールを保持してカナダのゴールに迫る展開が続いていったが、日本のゴールキックからのボール保持が機能しないこともあって、だんだんとカナダのボールを保持する時間が増えていく展開となる。……
Profile
らいかーると
昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。