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「普通じゃない」環境を求めて。イスラエルにたどり着いた十川ゆきが探究する「サッカーを知る」旅【インタビュー後編】

2023.10.12

昨季までWEリーグのジェフユナイテッド市原・千葉レディースに所属していた十川ゆきは、今季からイスラエルで史上初の日本人女子プロサッカー選手となった。いったいなぜ日本人が誰もプレーしていない環境への移籍を決断したのだろうか。現地で起こる紛争について聞いたインタビュー前編に続き、インタビュー後編ではサッカー選手としての現在と未来について聞いた。(取材:日本時間10月9日23時から、現地時間同日17時から実施。本人の発言に出てくる事象などは取材当時のもの)

前編→

18歳でスペイン行き、異例の“逆輸入”選手

 男子の日本代表が海外組中心になって久しいが、女子の日本代表「なでしこジャパン」にも徐々に海外組が増えてきている。とはいっても、その流れができてきたのはここ2、3年のことだ。

 「十川ゆき」という選手に初めて会ったのは、2019年の夏頃だったと記憶している。彼女がJFAアカデミー福島を卒業してスペインに渡る直前に共通の知人から紹介され、東京駅でランチをした。

 その時に話した内容は正直あまり覚えていない(申し訳ない!)が、「18歳にしては芯が強くて、面白い考え方の子だな」と感じたのはよく覚えている。すでに金髪で、スペインでの新生活に向けて高揚感に満ちあふれている印象だった。

 JFAアカデミー福島時代に指導を受けたスペイン人指導者の影響で海外移籍を志し、高校卒業後すぐ実際にスペインへ行ってしまうこと自体、だいぶ変わっている。当時の日本女子サッカーにおける海外移籍はなでしこリーグなどである程度実績を残した選手が中心だったので、18歳で即欧州というのも異例だった。

 十川は19-20シーズンから2年間はレアル・オビエドで、21-22シーズンをラシン・サンタンデールで過ごし、2022年夏に帰国。スペインではトップリーグでのプレーを経験できなかったが、日本ではWEリーグのジェフユナイテッド市原・千葉レディースに加入し、“逆輸入”選手として奮闘した。

 だが公式戦での出場機会はごくわずかしか得られず、契約満了にともない1シーズンでジェフレディースを退団。「今後はどうするのかな……」と思っていたら、8月に移籍先がイスラエルになることを知った。

イスラエル行きを選んだ理由

 日本人女子プロサッカー選手としては、史上初のイスラエルリーガー誕生である。未知の環境に自ら飛び込んでいくのは十川らしい。日本国内での移籍ではなく、あえてイスラエル行きを選んだ理由もやっぱり独特だった。

 「決めた理由は本当に明確です。『監督に惹かれて』という、ただそれだけと言えばそれだけなんですけど……」

 新天地はイスラエル女子1部リーグのアポエル・ペタ・ティクヴァというクラブになった。監督を務めるのは、アルゼンチン出身のガブリエル・ブルステインだ。現役時代からイスラエルでプレーし、引退後も指導者としてイスラエルで実績を積み上げ、同国で女子代表監督を務めた経験も持つ。スペイン語の他にヘブライ語や英語など複数の言語を操り、昨夏にはパリ・サンジェルマンの女子チーム監督に就任する可能性もあった名将である。……

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十川ゆき

Profile

舩木 渉

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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