ビルドアップ大研究
ペップ、デ・ゼルビ、シャビ・アロンソ… 欧州最先端の「ビルドアップ」を考察する
[特集]
現代サッカーの核心
ビルドアップ大研究
敵陣ファイナルサードの中央3レーンにいる味方にクリーンな形でボールを届ける――すなわちアタッカーがフリーで前を向いて最終ラインに仕掛けられる状況を作ることを目的として、欧州のトップレベルでは昨今、ほとんどのチームが後方からのビルドアップを基本に据えている。相手のプレッシングの仕方に合わせて配置やルートを変えるのも当たり前。チームが一つの流動体のように空いたスペースに入り込み、前進していくビルドアップのフェーズは、監督にとっても持てるクリエイティビティを発揮できる腕の見せどころだ。今号では開幕2カ月弱が経過した欧州5大リーグから、ビルドアップ構造に注目のチームを中心に、23‒24シーズン最新の様々な活用例を考察。その能動的かつ主体的なプレーを通して、いかにアドバンテージを確立しようとしているのか、それぞれのコンセプトやメカニズムに迫った。
[対談]レナート・バルディ×片野道郎
「2+4」「3+2」「2+3」
ビルドアップの構造を読み解く
ENGLAND|PREMIER LEAGUE
◯マンチェスター・シティ
[3-2-5]+“6人目”攻撃のさらに先
今季は[3-1-3-3][1-3-3-3]の成熟へ
◯アーセナル
合言葉は“ライスを解放せよ”
重要度を増す最終ラインの攻撃関与
◯トッテナム
ハイリスク・ハイリターンの“3-3-5”
プレミアでも貫く“アンジェ・ボール”
◯リバプール
新たな8番と10番の創造性を生かす
リバプール式偽SB、2季目の狙い
◯マンチェスター・ユナイテッド
崩しのテンポを操る列の上げ下げ
散開配置+1のオナナ活用術
COLUMN
現代のGKに求められる
「ディストリビューション」の新しいスキル
◯チェルシー
左のオーバーロードから右の活用が第一
得点力とともに改善急務な「39歳」頼み
◯ウェストハム
“後釜”アルバレスのシンプルな選択が
チームにもらたす「予測困難」の仕掛け
◯ブライトン
デ・ゼルビ流の動的なボール保持構造
今季の進化はミドルサードでの相互作用
COLUMN
デ・ゼルビ・メソッド
イタリアの奇才に学ぶビルドアップの極意
SPAIN|LIGA ESPAÑOLA
◯レアル・マドリー
パターンなき最適解の位置取り
+ロングボールで質的優位を押し付ける
◯バルセロナ
自由なF.デ・ヨンクをロメウがサポート
独自規格を捨て柔構造でモダン化に成功
◯アトレティコ・マドリー
MF・FWと化す左CBの個が主張する
時間限定のシメオネらしからぬ“冒険”
◯ジローナ
ペップの影響が色濃い両SBの多様化
左ライン際に張りっ放しのサビオがカギ
◯ラス・パルマス
CBマルモルがいてこそ成り立つ
ポゼッション志向+中盤省略スタイル
FRANCE|LIGUE 1
◯パリ・サンジェルマン
全員攻撃、全員守備が「エンリケイズム」
じっくりパスを繋ぎ全体を押し上げる
COLUMN
ビルドアップにおけるシンプルな前進手段
「ワンツー」を統計データから再考する
ITALY|SERIE A
l’Ultimo Uomo
ミランのボール保持は
すでに非常によく機能している
◯インテル
同じ外回りでも異なる「ロンボ」の仕組み
技巧派そろう左サイドの流動性と意外性
◯ユベントス
キエーザは期待も“ないものねだり”に…
新戦術コーチと試みるモダン化の行方
◯ラツィオ
移動は最少。相手を引き込み
守備組織を崩すサッリ・ボールの真髄
◯アタランタ
サイドに人数をかけるガスペリーニ流は健在
「5人目」が絡むメカニズムの変化をたどる
COLUMN
古くて新しい、ブラジルの異能
ジニスの破壊的なビルドアップ
GERMANY|BUNDESLIGA
◯バイエルン
トゥヘルの本領がついに
ケインが肝の「敵に応じたシステム変更」で変幻自在
◯ドルトムント
プレス+縦一辺倒からの脱却へ
的を絞らせない可変システム導入
◯RBライプツィヒ
「RBのDNA」を進化させる
ボール保持時間に応じた二刀流
◯シュツットガルト
両サイドが偽SB化する
“逆クリスマスツリー化”でプレス回避
◯ホッフェンハイム
中央空洞化でスペースを生み出し
ロングボールで攻め立てる
◯レバークーゼン
「非対称3バック」とレイオフを駆使した
「ローテーション型ポジショナルプレー」
COLUMN
シャビ・アロンソがこだわる「サッカーの見方」
次代の名将は、本当によく「数」について考えている
REGULARS
戦術リストランテ ●西部謙司
– レアル・マドリーのベリンガム・システム解剖
ドイツサッカー誌的フィールド ●ダニエル・テーベライト
– 「夏のメルヒェン」の再現は…EUROを前に、国内は冬の空気
ディープスロート内部情報が語るレアル・マドリー ●ディエゴ・トーレス
– “MF”としては”失格。ベリンガムの意外な波及効果
TACTICAL FRONTIER進化型サッカー評論 ●結城康平
– 社会情緒的優位性を重視。南米を再興させるリレーショナルプレー
CALCIOおもてうら ●片野道郎
– 閉塞状態のカルチョを変革するアメリカ資本の経営戦略
サッカーを笑え ●木村浩嗣
– 告訴、逮捕された選手をクラブは守るべきか?
連載コラム
ENGLAND ●山中 忍/ FRANCE ●小川由紀子
NETHERLANDS ●中田 徹/ UKRAINE ●篠崎直也
BRAZIL ●沢田啓明/ ARGENTINA ●Chizuru de Garcia