5カ月間もノーゴール……イングランド3部で生まれた不名誉な記録
イングランドで信じられないような記録が生まれている。今季、まだ一度もゴールを奪えていないクラブがあるというのだ。
イングランド3部リーグに所属するチェルトナム・タウンは、同リーグで断トツの最下位にいる。今季ここまでリーグ戦11試合を戦って「0勝1分け10敗」の勝ち点1。同リーグで唯一、まだ一度も勝つことができていない。それどころか、ここまで「0得点19失点」と一度もゴールを奪うことができていないのだ。
史上3チーム目の不名誉な記録
1888年に発足したイングランド・フットボールリーグにおいて、彼らは開幕からのリーグ戦での“無得点記録”という不名誉な記録を打ち立ててしまっている。10月7日に行われたホームでのフリートウッド戦でもゴールを奪うことができず、これで「開幕から」と限定することもなく、135年の歴史を誇るイングランドのリーグにおいて最長となる11試合連続でのノーゴールというワースト記録に並んでしまった。1919-20シーズンのコヴェントリー、1992-93シーズンのハートリプールに続いて史上3チーム目の記録だという。
チェルトナムが前回リーグ戦でゴールを奪ったのは5カ月も前のこと。5月7日に行われた昨季最終節のチャールトン戦でFWアルフィー・メイがネットを揺らして以降、一度もゴールを奪えていない。それから11試合、プレー時間にして16時間半もノーゴールが続いている。
リーグ戦に限った話ではなく、カップ戦を含めても、今季チェルトナムの選手はゴールを奪うことができていない。9月5日に行われたEFLトロフィーの試合で今季唯一のゴールを決めているが、それも相手チームのOGなのだ。
ファンは愛情をもって温かく見守る
今季チェルトナムがゴールを奪えていないのには理由がある。136年の歴史を誇る同クラブは、これまで大半の時間をノンリーグと呼ばれるプロリーグではないリーグで過ごしてきた。1999年にようやく4部昇格を決めてフットボールリーグに加盟すると、2021年にクラブ史上初めて3部リーグ昇格を果たしたばかりなのだ。さらに今オフにはエースを引き抜かれてしまった。過去2シーズン連続で20ゴール以上を決めてチーム得点王に輝いていたFWメイがチャールトンに移籍したのである。そのためゴール前での不発が続いているのだ。
英紙『The Guardian』によると、ファンたちは「ギネス世界記録に載っちゃうかもね」と自虐的な冗談を言っているそうだ。だが、チーム愛が揺らぐことはなく「自信が低下している。そういう時に野次られたら逆効果」として、多くのファンは温かく見守っているという。
今季、リーグ戦で103本のシュートを放ちながらいまだにノーゴールのチェルトナム。今週末はホームにダービー・カウンティを迎える。もし、この試合でもゴールを奪うことができなければ、リーグ戦12試合連続ノーゴールというイングランドフットボールの歴史において前人未到の新記録(ワースト)を打ち立てることになる。果たして、彼らはゴールを奪うことができるのだろうか? イングランド3部リーグにも注目したい。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。