J2で首位を快走するFC町田ゼルビアで6月まで主力を張っていたボランチはいま、モンテディオ山形のレギュラーとして、NDソフトスタジアムのサポーターを背にピッチを駆け回っている。高江麗央。25歳。誰もが驚くような覚悟の移籍を決断し、今度はみちのくの地からJ1の舞台を目指す確かな才能の現在地を、モンテディオの伴走者・佐藤円に伝えてもらおう。
移籍直後の先発出場でチームの連敗ストップに貢献
FC町田ゼルビアで3年半の間、主力としてプレーしていた髙江麗央のモンテディオ山形完全移籍がリリースされたのは7月18日。首位のチームで主力を張り、6月最後の試合まで先発出場を続けていたボランチの同カテゴリーへの移籍は電撃的で、J2の中でも驚きをもって受け取られていたように思う。
その町田側の経緯については、郡司聡さんの記事「衝撃が走った髙江麗央、深津康太らの移籍劇…ゼルビアのフロントが、苦渋の決断の先に見据えるもの」にもあるが、山形側でも、クラブの強化部から髙江が獲得可能であることを知らされた渡邉晋監督もさすがに驚いたという。ただ、獲得の決断は迅速だった。
合流しての初練習は19日。そしてその3日後にはV・ファーレン長崎とのリーグ戦に先発で出場している。チームの3連敗を受けて臨んだ長崎戦だったが、終わってみればゴールラッシュで5-1の勝利。それまでの停滞した空気を一気に払拭する勝利となった。
79分までプレーした髙江のパフォーマンスも出色の出来だった。合流4日目とは思えないフィット感で、ボランチのコンビを組む南秀仁と常に連動。狭い隙間を通してライン間に縦パスを送って推進力を生み出したり、ショートコーナーからのクロスで2点目のアシストも記録した。ホーム・山形のサポーターの前で、背番号29のプレーを鮮烈に記憶させる、最高の船出となった。
「自分がどうというより、周りの選手がすごい動いてくれましたし、人と人がしっかりつながっていたので、自分もあまり不安はなく、トレーニングから選手とコミュニケーションを取りながらやれていたので、それが今日もいいふうにつながったかなと思います」
指揮官も認める武器は『パスで空間を使える』特殊能力
渡邉監督は髙江のプレーの特長について、こう話している。……
Profile
佐藤 円
1968年、山形県鶴岡市生まれ。山形のタウン情報誌編集部に在籍中の95年、旧JFLのNEC山形を初取材。その後、チームはモンテディオ山形に改称し、法人設立、J2参入、2度のJ1昇格J2降格と歴史を重ねていくが、その様子を一歩引いたり、踏み込んだりしながら取材を続けている。公式戦のスタジアムより練習場のほうが好きかも。現在はエルゴラッソ山形担当。タグマ「Dio-maga(ディオマガ)」、「月刊山形ZERO☆23」等でも執筆中。