日本代表MF三笘薫を擁するブライトンの好調の要因は「食」にあるのかもしれない。
昨季プレミアリーグで6位に入る快進撃を見せたブライトンは、今季もここまで上位をキープしており好調だ。そんなチームの躍進の秘密を探ろうと、先週は英国メディアがクラブに密着したという。そこで見えてきたブライトンの秘密の1つが「食」だという。
毎日のように270人分の食事を用意
今夏、ブライトンは新たなシェフを迎えた。それが40歳のウィル・カルヴァーリョだ。ミシュランの星を持つレストランで腕を振るった経験を持つポルトガル人は、10人のシェフを抱える調理チームのトップとして毎日のように朝8時から午後2時まで270人分の朝食・昼食を用意する。味や栄養バランスは当然のこと、彼は食べる人を飽きさせないことをモットーとしており、同じ食材でも調理法を変えるなどして常に違う料理を選手やスタッフに提供している。
クラブハウスの料理だけではない。遠征時には、2週間前には滞在するホテルのシェフと話し合い、特別なメニューを準備するという。そして試合後の選手の食事も用意する。9月16日のマンチェスター・ユナイテッド戦では、アウェイで3-1と快勝した選手たちにチキン・カネローニ(パスタ)、照り焼きチキン、ビーフシチュー、バナナブレッド、ヨーグルトにチョコレートケーキを振る舞った。ブライトンのチームにはベジタリアンがいないため、とりわけチキン・カネローニは好評だったという。
「同じメニューは繰り返さない。フォカッチャだけは毎日用意するが、それも違った味にしている」とカルヴァーリョは英紙『Telegraph』で説明した。様々なアイデアを取り入れるカルヴァーリョは「フェラーリを買っても、適したガソリンを給油してメンテナンスをしなければダメになる。それは食材も同じなことなんだ」と話す。
謎のドリンクでサプライズを目論む
彼が美味しくて飽きない料理を提供できる理由は、彼の経歴にあるようだ。ミシュランの星を持つレストランで腕を振るった彼は、その後スポーツチームの食事面をサポートするようになった。2011年から国際大会でのブラジル女子代表チームの料理を担当してきた。さらに2015年から今年8月までは、英国の名門ラグビーチーム「グロスター・ラグビー」の専属シェフとなり、昨年はラグビーのスコットランド代表チームもサポートした。だから「味」「栄養」「日替わり」という条件を満たすことができるのだ。
「味はもちろんだ。それでいて、毎日のように違う食事、時にはサプライズを提供したい。だから毎朝、違う味のお粥を用意しているのさ」と『Daily Mail』に語るカルヴァーリョは、寿司やカレーなど多彩なメニューを用意する。さらに、新たな挑戦にも乗り出している。オレオ(お菓子)のミルクシェイクをメニューに加えるという。もちろん、本当にオレオを入れたシェイクではカロリーオーバーのため、オレオを使わない“オレオ味のシェイク”という謎のドリンクで選手たちを驚かせたいという。
そんな工夫を凝らすカルヴァーリョの料理は選手たちにも好評で、練習後に料理を持ち帰る選手が増えてきているという。中には袋いっぱいに料理を詰め込んで持ち帰る選手もいるそうだ。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。