8月26日。カンセキスタジアムとちぎ。栃木SCと水戸ホーリーホックが対峙した『北関東ダービー』は激闘に。アウェイチームが1点をリードしたまま迎えた後半アディショナルタイム。ホームチームが執念で追い付き、両者に勝ち点1ずつが振り分けられる結果となった。では、この“ダービー”という特別なゲームを戦うに当たり、それぞれのサポーターはどういう形で試合に向かい、試合後にはどういう感慨を抱いたのか。今回は両クラブに寄り添い続ける名物番記者、水戸サイドは佐藤拓也が、栃木サイドは鈴木康浩が、その歴史的経緯やサポーターが紡いできた想いを丁寧に綴る。
「ダービーは順位や力関係は関係ない。勝たないといけないんです」
8月26日にカンセキスタジアムとちぎで行われた第32節、栃木SCとの北関東ダービー。2対1でリードして迎えた試合終了間際。勝利を目前とした状況でPKを献上。豪快に決められて、勝利を逃すこととなった。
ファウルを与えたのは、この試合で約3カ月ぶりの復帰を果たした大崎航詩。それまで出色のパフォーマンスを見せていた彼にとってあまりにも残酷な幕切れとなった。
「責められるのは自分だけでいい」
試合終了と同時に大崎はピッチに泣き崩れた。そして、チームメイトに肩を抱えられながら、サポーターのもとへ、試合後の挨拶に向かった。
選手たちは全力で戦った。勝利まであと一歩だった。大崎の悔しさも分かる。
しかし、水戸サポーターの多くは心を鬼にして、選手たちに拍手を送るのではなく、厳しい言葉を投げかけた。
「ダービーは順位や力関係は関係ない。勝たないといけないんです」
水戸ホーリーホックサポーター団体「BLUEs」代表・坂部芳則さんは力強い口調でそう語る。
自分たちが“ダービー”を作り上げてきたというプライド
その思いには理由がある。坂部さんは続ける。
「水戸は毎年選手の入れ替わりが激しいクラブ。JFL時代から在籍している本間幸司選手もいますけど、彼1人がチームの中でダービーの思いを伝えていくのは無理がある。だからこそ、僕たちが伝えていかないといけないんだと思っています」
そして、こう付け加えた。
「もし、栃木戦がダービーでなかったら、試合後に『顔を上げろ!』とポジティブな声がけをしていたと思います。でも、ダービーという名のもとに戦っているのならば、絶対に負けてはいけないんです」……