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ブラジル、2つの代表メンバーを同時発表。注目のビットー・ホッキはU-23に

2023.08.28

 8月18日、CBF(ブラジルサッカー連盟)本部で、2つのブラジル代表招集メンバー発表会見が行われた。1つは9月に開幕する2026年ワールドカップ南米予選2試合、ボリビア戦とペルー戦に向けたA代表のメンバー。もう1つは来年のパリ五輪を目指してスタートするU-23代表。今回は9月に行われるモロッコとの2つの親善試合のための招集だ。

 その2つの代表のどちらに入るかで注目されたのが、アトレチコ・パラナエンセのFWで、この7月にバルセロナ移籍が決まった18歳のビットー・ホッキだった。最終的に、今回はU-23代表でプレーすることになった。

発表当日朝、U-23代表のリスト入り

 フル代表は、先月就任したばかりのフェルナンド・ジニスによる初招集だ。今回のメンバーの平均年齢は、2022年W杯より3歳若くなっているとしながらも、過激な世代交代を進めたり、大幅にメンバーを変更したりするのではなく、これまでの代表の常連をベースにしつつ、現状とジニスの興味に即した形で数人を入れ替えたというのが分かる顔ぶれだ。

 一方、U-23代表は、U-20代表からの持ち上がりでラモン・メネーゼス監督が率いる。ラモンとジニスは現役時代、フルミネンセで一緒にプレーした時期もある親友で、今も密に話し合っている。ジニスが今回はビットー・ホッキを招集しないと決めたのは発表当日の朝だったらしいが、それなら是非にとU-23代表のリストに正式に加えた。

 ただ、ラモンは「ビットー・ホッキは素晴らしい選手だから、今後フル代表にも招集されるだろう。僕がフル代表の監督代行を務めた時に招集したようにね」とし、U-23代表としての成績の重要性はもちろんだが、年代別代表で経験を積んだ選手をフル代表に送り込むことは、自分たちの目的でもあると語った。

「ネイマールとロナウドを参考にしている」

 2021年にクルゼイロでトップチームに昇格した後、昨年アトレチコ・パラナエンセに移籍してブレイクしたビットー・ホッキ。一躍ブラジルの期待の新星として注目されるようになった彼に思い出のゴールを聞くと、こう答えていた。

 「昨年のコパ・リベルタドーレスの、リベルター(パラグアイ)戦でのゴール。17歳でのコパ・リベルタドーレスデビュー戦で、初ゴールを決めることができたんだ。僕の経歴の中でも、最も心に刻まれるゴールだよ」

 プロでの経験が多いことから、年代別代表でのリーダーシップなどの役割について聞くと「そう言ってもらえることには感謝するばかりだけど、個人的にはそういうことは考えていない。チームメイトと一緒にプレーに集中して頑張りたい」と、謙虚に答えていた。

インタビューでは謙虚な受け答えをするホッキ(Photo: Kiyomi Fujiwara)

 その自分のプレーについては「僕はパワーとスピードを兼ね備えたFW。フィニッシュも得意。この特徴を生かして、ブラジル代表に貢献できることを願っているよ。ネイマールをお手本にしているんだ。それから、外国人ではクリスティアーノ・ロナウドのプレーをいつも見て、この2人の特徴をミックスさせようとしている」と、笑顔で語っていた。ピッチの外では少し控えめで、いざ試合になると非常に強気。シュートでもアシストでもチャンスを逃さない。そういう印象だ。

 U-20代表では、今年1〜2月の南米選手権で6ゴールを決め、チームメイトのアンドレイ・サントスと得点王を分け合うなど、優勝の原動力の1人となった。FIFA国際マッチデーとは関係ない年代別代表の大会だが、招集を受けた時には「クラブが僕に聞いてくれたから、僕はもちろん絶対に出たいと答えた」と言っていたように、代表のシャツを着ることへの思い入れの強さもある。そして、2026年W杯への夢を聞くと「もちろんそれは夢だけど、一歩ずつ頑張っていきたい。今はU-20南米選手権に集中して、優勝するのが夢だ。その次にU-20W杯がある。その後で2026年のことを考えたい」と、やはり謙虚な答えが返ってきた。

1月のU-20南米選手権では6ゴールを挙げて得点王に輝いた(Photo: Rafael Ribeiro/CBF)

 それだけに、今年5〜6月のU-20W杯でも期待されていたが、クラブが派遣を拒否した。そのW杯でブラジルがまさかの準々決勝敗退に終わった時には、チームの勝敗が1人の選手次第ではないことは分かっていながら、国民は「ビットー・ホッキがいれば」と嘆いたものだ。

招集先にはスペインメディアも注目

 そうした活躍と注目度の急上昇の中で発表されたのが、バルセロナとの契約だった。当初、契約期間は2024-25シーズンから2030-31シーズンまでとされ、実際に合流するのは2024年7月と報道されていたが、アトレチコ・パラナエンセのコパ・リベルタドーレス敗退により、バルセロナは今季からの合流を希望したとも言われている。最終的にはアトレチコ・パラナエンセが「今年いっぱいはここにいる」と改めて発表し、来年1月のスペイン行きの可能性が大きくなったと思われる。

 今回の招集には、そのバルセロナも、スペインメディアも注目していた。スペイン紙『アス』は、バルセロナの幹部が「彼がフル代表に招集されなかったことは理解できない」と語っていると報じた。クラブとしては、彼に強い相手と対戦し続けて欲しいと願っているからだ。

 さらに『アス』紙は、今回招集されたFWのうちの2人、リシャルリソン(トッテナム)とマテウス・クーニャ(ウォルバーハンプトン)のここ数カ月間のゴール数と比べ、ビットー・ホッキが今季それまでの48試合で24ゴールと8アシストを決めていることも引き合いに出し、ジニスの招集を疑問視した。

 ただ、ブラジルメディアは今回の決定にも概ね納得しているような雰囲気がある。U-23代表なら主力として出場し、モロッコという違った土壌を持つ相手との対戦を経験し、試合の中でさらにスキルを磨くこともできるためだ。

 スペインメディアでは、バルセロナに行くビットー・ホッキと、やはりスペインのレアル・マドリーと契約を結び、来年7月に合流予定の17歳のエンドリッキ(パルメイラス)を比較するような記事も出ていた。どちらが良いと推すにしても、ブラジルが才能ある若手を輩出し続け、ヨーロッパサッカーから合流を楽しみに待たれているのは、頼もしい限りだ。


Photos: Kiyomi Fujiwara, Rafael Ribeiro/CBF

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Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。

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