グループCでザンビア、コスタリカ、スペイン、そしてラウンド16でノルウェーを下し、迎えた8月11日の準々決勝(ニュージーランド・オークランド)。日本代表は東京五輪と同じスウェーデンを相手に1-2で敗れ、2011年以来のW杯優勝を目指した挑戦はベスト8で幕を閉じた。
プレスの強度、奪い切る力
“もしかしたら……”と思わせてくれる終盤の反撃だった。前半にセットプレーの流れから先制点を奪われ、後半の早々にPKで2点目を与えてしまった“なでしこジャパン”だが、立ち上がりからハイペースだったスウェーデンの失速、そして池田太監督による交代策が徐々に実り、87分にはMF林穂之香(ウェストハム)のゴールで1点差として、なおも攻勢をかけた。
2-2の同点に追いつけば、延長戦を戦うことができる。ラウンド16から中4日(日本は中5日)で、しかも優勝候補のアメリカと120分+PK戦の死闘を繰り広げたスウェーデンの体力を考えれば、延長戦の30分は日本にアドバンテージがあるはずだった。しかし、その同点ゴールがあまりにも遠かった。前半0本だったシュート数をスウェーデンと同じ13本まで挽回したが、そうしたスタッツも結果に反映されなければ空しい数字に過ぎない。
「ここまで勝ち進んできて、この大会でのチームの成長、個人の成長がありました。なでしこジャパンを世界に示すことができたのは事実だし、ここで敗れたことも事実。この大会に向けてのトライに関しては本当に評価すべきことですし、一緒に戦えたことを誇りに思っています」
池田監督は試合後の会見で気丈に振る舞いながら選手たちの頑張りを称えたが、その一方で「我われのプレスの強度、奪い切る力はチームとしても個人としても、もっともっと上げていかなければいけないと感じました」と、厳しい現実を語ることも忘れなかった。
「前半は中盤の選手を捕まえるところで(マークの)ずれを使われたり、我われがプレッシャーをかけた時に長いボールで前線の選手を走らせてきたり。我われを困らせる攻撃に対して、修正に少し時間がかかったという印象です」
スウェーデンの「ヴーヴーヴー」
これまでの4試合と同じく[3-4-2-1]、ディフェンス時は基本的に[5-4-1]のブロックを組んで、コンパクトに構えながら相手のボール保持状況によってプレスのスイッチを入れる。そのベースは変わらなかったものの、スウェーデンの厳しいプレッシングを想定して、左ウイングバックにはテクニカルな杉田妃和(ポートランド・ソーンズ)を先発起用した。
対するスウェーデンもシステムとスタメンこそアメリカ戦と同じ[4-2-3-1]だったが、ペーター・イエルハルドソン監督が「違った戦いになる」と語っていた通り、日本が狙う背後のスペースをしっかり消しながら、中盤の長野風花(リバプール)や長谷川唯(マンチェスター・シティ)がボールを持てば複数の選手がプレスを敢行。ボールを外側に追い出して奪取すると、右サイドはトップ下のコソバレ・アスラニ(ミラン)を絡めた多彩なパスワーク、左サイドはシンプルな仕掛けを組み合わせて日本のゴールに襲いかかった。
「日本はとてもスキルがあるチーム。攻撃面においては技術的にも戦術的にも優れています。でも、我われがきちんとしたポジションを見つけることで、ミッドフィールドでもかなりプレッシャーをかけられたと思います」……
Profile
河治 良幸
『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。