ついに幕を開けた2023-24リーグ1。フランス杯王者として新シーズンに臨むトゥールーズで、3年目を迎えているのはオナイウ阿道だ。日本時間8月13日22時キックオフの初陣ナント戦に先駆けて、現地取材を重ねている小川由紀子氏が実施した独占インタビューを前後編に分けてお届けする。
後編では、22-23シーズンを振り返りつつ新シーズンへの意気込みを語ってもらった。
パターン化した途中出場で伸び悩んだ得点
「ただプレー時間だけが伸びていって…」
――22-23シーズンの初出場はリーグ1・2節のトロワ戦でアシストも記録しました。シーズン初ゴールもトロワ戦(21節/2月1日)です。
「あれがアシストになったのは、リス(・ヒーリー)がああいうゴール(中距離からのボレー弾)を決めてくれたからですけど……。数字っていう部分では、先発はそんなに多くなかったですけど、たくさんの試合に途中出場も含めて出させてもらった中で、2ゴール1アシストしかできなかったっていうのは、すごく自分自身に情けなさも感じます。得点できるような機会を多く作れなかったことも。もちろん自分だけ、1人でできるようなことではないので、そこはチームあってのこともありますけど、自分がそういう機会を持てなかったところも少なからずあると思うので、得点できそうなところに常にいられるような選手にならないといけないなと思っています」
――22-23シーズンは序盤戦でそのヒーリーが怪我で長期離脱、モンタニエ監督は「真ん中(CF)はオナイウだ」と話していましたが、結果的に途中出場する機会が多かったです。得点を狙うには先発で出ていないと難しい部分もありますよね。
「そうですね。試合の展開も含めて、少しリードなりしている状態で途中から出ても、最後20分とかは結構守備に回ってしまうことも多かったので。そういった中でなかなかこう……(熟考して)その中でも、何て言うんですかね、チームが苦しい中でボールをキープするとか、時間を作るのは重要な役割だと思うんですけど、でもそれって結局チームの中だけで、チームのためにプレーできているっていうことにはなるけど、ただプレー時間だけが伸びていって、数字を残せないままシーズンが終わっていく感覚が昨シーズンはありましたね」
――モンタニエ監督は選手の疲労や試合の展開に合わせて交代策を講じるというよりも、パターンを組んでいましたよね。前半はタイス(・ダリンガ)で、後半はオナイウ選手みたいな。
「そうですね。誰が出てもある程度、同じぐらいの時間で選手が代わっていました。でもタイスもシーズンの最初の半分ぐらいは得点が伸びていたわけではなかったので、逆にそういう時期に僕が途中から出て得点を決めていれば、シーズンの終わり方は違ったのかなと思います。そこでなかなかスタメンが変わらなかったので、自分の中でもストレスを抱えながらプレーしていたのはありました。でも、そこで文句を言っていても結局は言い訳なので。正直に言うと、そうなってしまっていた自分もいました。誰かのせいにしないで『自分の実力が足りないから』って認めるのってやっぱり難しいし、嫌なんですけど、それを乗り越えられればちゃんと自分に返ってくると思うので」
貴重なチームプレーヤーとしての葛藤
「その評価に満足して自分の基準を合わせちゃうと…」
――フランスではオナイウ選手のように途中から入って真面目に守備したり、粘り強くマイボールにしたりしてチームプレーに徹する選手は少ないですからね。……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。