J2の残留争いに巻き込まれ、クラブ史上最大の窮地に陥っていたいわきFCだが、監督交代後の直近7戦は4勝3分負けなしと完全復活を遂げた。そのチームの起爆剤となっているのが岩渕弘人だ。まだJFL(日本フットボールリーグ)に所属していたいわきFCに加入した岩渕は、チームとともにカテゴリーを上げながら確実に成長を遂げている。今後のJ2あるいはJ1でも旋風を巻き起こせる新たなブレイク候補だ。岩渕の辿ったキャリアについて、いわきFC番のライター柿崎優成が迫った。
ボールがこぼれてくる先で「予測が立つ」岩渕がゴールを奪う
昨年10月末に前十字靭帯損傷、外側半月板損傷の大怪我を負った岩渕弘人が復帰してチームは好転した。
「残りの試合全部やってやるくらいの気持ちで」
そう意気込んだとおり、復帰初戦のJ2第22節大宮アルディージャ戦を皮切りに直近6試合で4試合連続得点を含む6ゴールを量産してチームに貢献。降格圏内に瀕していたチームを救い、いわき復活を予感させる活躍でチームを蘇らせた。
サポーターからの信頼も厚く、ホーム戦で彼が途中出場でピッチに入れば空気を一変させる力がある。前向きにボールを持った時の歓声は人一倍沸く。期待の表れであり「何かやってくれる」と思わせてくれる選手だ。
ところで、彼を知らない人からすれば岩渕とは何者だと思ったかもしれない。
彗星のごとく現れた選手ではない。JFL時代からいわきFCに在籍する苦労人だ。プレーの特徴としては、得点感覚に優れながら、試合中、常にあらゆる予測を立ててプレーしている。何よりポジショニングの良さがある。
得点場面で言うならば、昨シーズンのJ3第21節の福島ユナイテッドFC戦の先制点や第26節のFC岐阜戦の決勝点は象徴的だった。両ゴールともに、どこにボールがこぼれてくるのか、先に動きを変えることで得点につながった。
「常にボールが来ても良いように準備している。どこにいたら点とれるか」を考えているため、彼が得点に絡む場面は非常に多く、昨シーズンはJ3で9得点5アシストという結果も残している。
田村雄三監督は「人と違うことをやる印象が今もある。ここにパスを出せと言っても違うところに出したり、サッカーセンスや感性が他と違うと思うときがある。得点するところにいるし、予測がすごく立つ」と岩渕の印象を話す。
効果的なストレングスやスプリントトレーニングによる変貌
仙台大学時代にチームで筋トレを週2回取り組んでいたこともあり、いわきに加入してからもストレングストレーニングに抵抗は少なかった。それでも「筋トレの量が違った」と入団当初はついていくのに必死だった。
ただ、意欲的に取り組んだことで入団当初67Kgだった体重は73Kgに増えた。次第に、いわきではこれが普通という感覚も芽生えた。……
Profile
柿崎 優成
1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。