2016年夏、バイエルンからペップ・グアルディオラ監督を迎え入れたマンチェスター・シティが新体制で最初に獲得したのは、イルカイ・ギュンドアンだった。ドルトムント在籍時に指揮官の目をひき、その期待に時にボランチ、時にアンカー、時にインサイドハーフ、時にシャドーストライカーとして応え続けてきた万能MF。その7年間を自身3度目のCL決勝とシティとの契約満了を迎える今、ブログ『We gotta put it out somehow, yeah, yeah』の著者szakekovci氏と振り返ってみよう。
2016-18 : 7番サードが示した基礎能力の高さ
承前。
2回の大ケガに挟まれたデビューシーズンと、ペップ・シティが軌道に乗った2017-18シーズン、イルカイ・ギュンドアンの役目は主に、ダビド・シルバ(現ソシエダ)とケビン・デ・ブルイネの控えであった。
それもやむなし。当時のインサイドハーフ・ギュンドアンは、シルバとデ・ブルイネと比べて機能性に差があり過ぎた。シルバの十八番であり、攻撃の生命線でもあったポケットへのフリーランの意識が低い。かといって、デ・ブルイネのような必殺クロスもない。ギュンドアンが登場するとそのサイドの攻撃が停滞するというのが、もっぱらのファンの見方だった。
むしろ当時の彼をユニークたらしめたのは、発作のように飛び出す意外な得点力であった。チャンスと見るや周囲を顧みずゴール前に殺到する空気の読めなさ。笑ってしまうほどの柔軟な身のこなしと美しいボールタッチ。新世代のシャビ・エルナンデスとの評判と違い過ぎるプレースタイル。野球にたとえるなら7番サード、打率は2割5分そこそこ。ただし出会い頭の一発はあり、ホームランは14、15本打つ。そんな選手だった。
ただし、この後もシティで主力を張り続け、最終的には主将を担うだけの実力の片鱗も見せてはいた。どこでもいつでも、最低限のパフォーマンスは出せたのだ。特に16-17シーズン、おぼつかない組み立てを助けるために[4-1-4-1][4-2-3-1][3-4-3][3-4-2-1][3-5-2]と目まぐるしくフォーメーションが変わる中で、ギュンドアンはダブルボランチの片割れ、インサイドハーフ、トップ下と複数のポジションをこなし、どこでもそれなりのプレーを見せ、それなりにチームを繋いでいた。今にして振り返れば、基礎能力の高さを示していたとも言えよう。
2018-20 : 必要不可欠なゆがみの調整役へ
2018-19シーズンのアンカーを担ったのは最終的に年間のプレミアリーグベストイレブン『PFA Team of the year』に選出されたフェルナンジーニョだったが、2月終盤以降はケガで出場機会を減らしており、CL準々決勝トッテナム戦やリーグ戦でのマンチェスターダービーのようなビッグマッチを除いてはギュンドアンが中盤の底での仕事を引き継いだ。……
Profile
szakekovci (sake)
サッカーに関するビジネス、経営、ファイナンス、そして与太話を書くブログ『We gotta put it out somehow, yeah, yeah』の著者。マンチェスター・シティとスティーヴン・アイルランドのファン。普段は経営コンサルタント。