「バーレンドレフトでプレーしていた頃、このようなこと(CL決勝進出)が起こるとは思いもつかなかった」――21-22シーズンからインテルに加わったデンゼル・ドゥムフリースは、バーレンドレフトという街クラブのU-19でプレーしていた叩き上げの努力家だ。今ではオランダ代表でも欠かせない戦力となった27歳のユニークなキャリアを紹介したい。
インテルの右SB兼ウイングバック、デンゼル・ドゥムフリースはCL準決勝2試合で戦術実行能力の高さを示した。ミランとの第1レグではテオ・エルナンデスに対してイニシアチブを握り、攻守にサイドを制圧。第2レグでは守備に重きを置いたプレーでミランのエース、ラファエル・レオンを見張り続けた。
「彼(レオン)が帰ろうとして車に向かったら、僕はそこまで追いかけるかもしれない(笑)。彼はミランの中心選手なので、私の仕事は彼をピッチから消すことでした。監督から常に彼につくよう指示されていたのです」(CL準決勝第2レグ後のドゥムフリース)
CL準決勝の2試合とは違った動きを見せることもある。自陣のペナルティエリア近くまで敵が迫ってきたら、ドゥムフリースはアンカーのように中に絞り、敵陣ではインサイドハーフのように振る舞ったりする。今も昔もテクニックに難のあるドゥムフリースだが、オランダ時代とは違ってピッチのどこにポジションを取っても威風堂々と構えている。
彼の恩人の1人、ジオバンニ・フランケンは「ドゥムフリースはディルク・カイトのようだ」と言う。柔らかなテクニックとはほど遠い2人はともに育成期のほとんどをアマチュアクラブで過ごした。しかし、向上心、ハードワーク、献身性、鍛え抜かれたフィジカルなどをベースに戦い抜き、ステップアップを重ねるごとに機能的なテクニックを身につけていった。
もう1人の恩人、アレックス・パストールは「ドゥムフリースのキャリアは、フィリップ・コクーやヤープ・スタムのようだ」と評す。ステップアップ先のレベルの高さに最初はついていけないこともあった彼らだが、即座に課題の克服に努めて自己を高め、いつの間にか要求されるレベルに達し、さらに越してしまうのだ。
ミランとの準決勝を連勝で飾り、6月10日のCL決勝進出を決めた後、ドゥムフリースはTVインタビューでこう語った。
「バーレンドレフトでプレーしていた頃、このようなこと(CL決勝進出)が起こるとは思いもつかなかった。勝つためにイスタンブールに行きます」
フェイエノールトの評価は「フィジカルだけの選手」
バーレンドレフト――。ロッテルダムの南に位置する街クラブのCBとしてプレーしていたドゥムフリースのことを、フェイエノールトのスカウトが視察に来たことがあった。……
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。