エリック・テン・ハフ監督を迎え入れ、復権を目指したマンチェスター・ユナイテッドは22-23シーズンのプレミアリーグを3位で終えた。2季ぶりのCL出場権こそ獲得したものの、またしても優勝争いに絡めなかった要因の一つは、ずばり「得点力不足」だろう。3連覇を果たした王者マンチェスター・シティの94点に対して58点と宿敵を大きく下回っている要因を、両者が激突するFAカップ決勝を前にプレミアリーグのマッチレビューを書き続けるユナイテッドサポーターのユナイタクト氏に分析してもらった。
今季のプレミアリーグ全日程を終えて勝ち点75の3位で、来季のCL出場権を手にしたマンチェスター・ユナイテッド。開幕2連敗(対ブライトン/●1-2、対ブレントフォード/●4-0)でスタートした今季序盤の状況を踏まえれば、素晴らしい巻き返しを見せたと言える。特に守備面では43失点でリーグ3位、クリーンシート17回はリーグ1位の素晴らしい成績を残した。
一方、攻撃面に関しては課題が残っている。58得点はリーグ7位で上位6チーム中60得点を下回ったのはユナイテッドのみ。1点差での勝利数も13回(1-0は7回)と、守護神ダビド・デ・ヘアを中心とした守備陣に助けられる試合が目立った。また、得点数が二桁に到達した所属選手は、17ゴールを挙げているチーム内得点王マーカス・ラッシュフォードのみと、エース依存も露見された。
そこで本稿では、課題として浮かび上がった「得点力不足」の要因を3つの視点から探っていく。
視点①応急処置にとどまったビルドアップの不完全さ
今季の序盤、新監督エリック・テン・ハフの戦術的志向に馴染みの薄いユナイテッドは低い位置からのショートパスによるビルドアップへの適応に苦労した。第2節ブレントフォード戦のデ・ヘアから中盤のクリスティアン・エリクセンへのパスを狙われて喫した2失点目に象徴されるように、ボールホルダーに対してパスコースを作る動きや前線から下りてくる動きが少なく、動き出しがあってもパスの出し手と受け手の意図が噛み合っていない場面が多々見受けられた。
結果として、テン・ハフが行った応急処置はロングボールの多用であった。第3節のリバプール戦以降は相手プレッシングの圧力が強ければ、GKデ・ヘアが前線へ放り込んだロングボールのこぼれ球を拾うことによって前進するビルドアップが増えていく。
テン・ハフが昨季まで率いたアヤックスでも、相手の激しいプレッシングに対する解答としてロングボールは戦術として組み込まれていたが、当時のチームにはセバスチャン・アレ(現ドルトムント)が最前線に構えていた。190cmの長身を誇る彼が基準点となってある程度のセカンドボール回収は見込めたものの、今季当初ユナイテッドのCF陣は指揮官やクラブと衝突したクリスティアーノ・ロナウドを除くと、ラッシュフォード(180cm)とアントニー・マルシャル(181cm)のみで、ターゲット役を担える人材が皆無。そのせいか冬に197cmのボウト・ベフホルストを期限付きで獲得したものの、攻撃よりも守備での貢献が目立った彼はリーグ戦17試合で無得点に終わり本末転倒に。おかげで終盤戦では再びラッシュフォードやマルシャルがCFで起用されている。……
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ユナイタクト
香川真司入団後、マンチェスターユナイテッドを応援するようになり、そのままハマった一般人。試合のレビューを気ままに投稿しているが最近サボり気味。観察眼は人並みだが、試合の細部まで触れたい人(レビューが長い原因…)。好きな食べ物はおにぎり。