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全力で走り続ける37歳。愛媛FCに帰ってきた不屈の男、森脇良太はまだまだ終わっていない

2023.06.01

37歳という年齢にもかかわらず、とにかく元気で、明るくて、ポジティブ。昨シーズン、15年ぶりに若き日の2年間を過ごした愛媛FCへと帰還した、森脇良太のことだ。そんなベテランが苦しんだ2022年シーズンを経て、再ブレイクの兆しをボランチという新天地で掴んでいるという。不思議と気になるこの男を前回の在籍時も見守っていた松本隆志が、改めて“いまの森脇良太”を語り尽くす。

「森脇良太はもう終わったのか」

 サンフレッチェ広島、浦和レッズの黄金期を支えた“元気印”森脇良太ももう37歳。トップカテゴリーで輝き続けた男の主戦場はいまJ3へと下がり、ここ数年は毎年のようにケガに悩まされ続けるなど、フィジカル面の衰えも隠しきれなくなった。

 言うまでもなくそのキャリアは晩年を迎えているが、なにも変わっていないモノもある。それは周囲にポジティブなエネルギーを伝染させる、底抜けに明るいパーソナリティ。そして、常に前のめりで挑み続けるサッカーへの情熱だ。

 “森脇良太はもう終わったのか”

 戦うカテゴリーが下がるだけでなく、出場機会も年々減少。栄枯盛衰はサッカー選手においてもつきものだが、それは森脇にとっても例外ではない。大手サッカーメディアでその名前が触れられる機会もなくなり、その存在は必然的な流れとして“消えゆく灯火”になるかと思われた。

 しかし、再び燃え上がるための火種はまだ残っていた。取り巻く環境こそかつてのモノとは大きく異なるが、森脇は自身のプロキャリアにおける“源流の地”愛媛で再び眩い輝きを放とうとしている。

2013年から2019年まで浦和レッズに所属していた森脇。2017年にはアジア制覇に貢献している(Photo: Getty Images)

15年ぶりに愛媛へ帰ってきた覚悟の移籍

 森脇は昨季、かつて2シーズン期限付き移籍でプレーした古巣・愛媛FCへ15年ぶりに帰還。プロになってからの2年間、広島で出場機会を得られていなかった若者は武者修行の地で大輪の花を咲かせると、広島復帰後の躍進ぶりは周知のとおり。自らを育んでくれた恩義あるクラブへの復帰は自らが望むモノだったという。

 「愛媛でプレーすることにやりがいを感じていた。僕はこのチームで若い頃に2年間お世話になり、すごく成長させてもらい、多くのことを学ばせてもらった。いまこそ愛媛に貢献したい。このチームに自分のエネルギーを全て注ぎたいと思っていた」

 2021年オフ、京都サンガF.C.を契約満了になった森脇のもとには、すでにあるクラブからオファーが届いていたが、「何としてでも愛媛のために貢献したくて、いろんな人を通じて愛媛にアプローチさせてもらった」と逆オファーをかける形で愛媛へ加入。強い覚悟と決意を持って再び愛媛の地に足を踏み入れた。

 今季の森脇はここ数年のそれとは違う。プレシーズンでやや出遅れたことにより開幕戦の出場こそ回避されたが、第2節以降はスタメンに定着し、持ち前のエネルギッシュなプレーと情熱をピッチで爆発させている。チームは開幕戦で5失点の大敗を喫したものの、気を吐く37歳に呼応するように好調へ転じ、9試合負けなしも記録するなど、堂々と昇格戦線へ食らいついている。

チームに貢献できなかった昨シーズンの悔恨

 「シーズンが始まってから非常に良いリズムでやれているし、自分の中ですごく良いフィーリングで今季を迎えることができた。コンディションも比較的良く持って来れているし、しっかり体も動いている」

 ハツラツとし、屈託のない表情でそう話す様はまさに“森脇らしい”ギラつきを感じるモノ。しかし、今季この森脇の活躍ぶりを予想した人がどれだけいただろう。

 その姿をつぶさに見ている指揮官、石丸清隆監督でさえ「想像していなかった。誤算。ただ、嬉しい誤算だった」と話すほどのサプライズ。それは裏を返せば、昨季の森脇がいかに苦境の一年を過ごしていたかを表すモノでもあった。……

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愛媛FC森脇良太

Profile

松本 隆志

出版社勤務を経て2007年にフリーへ転身。2009年より愛媛FCを中心としたプロサッカークラブの取材活動を始める。サッカー専門紙エルゴラッソ、サッカーダイジェスト等へ寄稿。ライター業とともにフォトグラファーとしても活動する。

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