いよいよ5月31日(日本時間6月1日4時キックオフ)に決勝を迎える2022-23シーズンのUEFAヨーロッパリーグ。史上最多6度の優勝を誇るセビージャと、初制覇を目指すローマの対戦だ。2年連続の欧州タイトルを狙うモウリーニョ監督のチームで注目すべき存在、ロマニスタにとって特別な26歳のMFについて、『ASローマ速報』管理人の如月たくみさんに綴ってもらった。
ローマはその96年間の歴史の中で4度、UEFA公式の国際大会で決勝まで勝ち進んでいる。
最初の進出は39年前、1983-84シーズンにまでさかのぼる。その前年にスクデットを獲得したローマは、チャンピオンズカップ(現チャンピオンズリーグ)決勝でリバプールと対戦した。しかし、この時はPK戦の末、ホームで敗れている。その次が1990-91シーズンのUEFAカップ準優勝。昨シーズンのヨーロッパカンファレンスリーグは、モウリーニョ体制初年度の戴冠としてまだ多くのサッカーファンの記憶に新しい。そして4つ目は、まもなくハンガリー、ブダペストで行われるヨーロッパリーグ決勝、セビージャとの一戦だ。
これら欧州の決勝のピッチに、ローマの偉大なバンディエラ、フランチェスコ・トッティとダニエレ・デ・ロッシが立っていないのは、ローマを応援する身としては残念な話だ。だが、彼らのプレーを幼少期から見てきた若者が、今ではそのキャプテンマークを受け継ぎ、カンファレンスリーグに次いで、2年連続のヨーロッパタイトルを永遠の都に持ち帰ろうとしている。
その若者の名はロレンツォ・ペッレグリーニ。現在のローマのカピターノ(キャプテン)だ。
トッティに憧れた生粋のローマっ子
ローマはイタリアでも突出して強烈な帰属意識を持つクラブで、ロマーノ(ローマっ子)だけが『バンディエラ』と呼ばれる象徴的な選手になる資格を持つ。トニーノ・カニュッチが書いた研究本『figli di roma. capitani e bandiere』(ローマの子供たち、キャプテンとバンディエラ)には、1927年の創立年にプレーしたジョルジオ・カルピからデ・ロッシまで16名の選手がバンディエラとして取り上げられている。100年近いクラブ史の中で16名――どれだけゴールを決めても、どれだけユニフォームを売り上げようとも、誰もがこの首都のクラブの象徴にはなれないということを、この数字は逆説的に教えてくれるはずだ。
2019年5月26日、このシーズン限りでの退団が決まっていたデ・ロッシはホーム、スタディオ・オリンピコのラストマッチを迎えた。試合前のロッカールームで、円陣を組み、その輪の中で彼は叫んだ。
「俺たちは誰のために戦うか、誰のために走るか、誰のために死ぬか、ローマだ!」
この気炎を上げる姿がSNSを通じて拡散されると、多くのロマニスタたちがその姿に心を震わせた。こういった姿が、次世代の若いロマーノの憧れとして受け継がれてきたのがローマの精神(ロマニズモ)だと言える。
そのキャプテンマークは、アレッサンドロ・フロレンツィ(現ミラン)を経由して、ロレンツォ・ペッレグリーニに受け継がれた。その後、ペッレグリーニの成長は目覚ましく、2020-21、2021-22シーズンと二桁得点をマークすると、2022年6月4日に行われたUEFAネーションズリーグのドイツ戦では、10番のユニフォームを着てゴールを決め、イタリア代表の主軸としての期待も高まっている。……
Profile
如月 たくみ
2004年から続くASローマ情報サイト『ASローマ速報』管理人で、2022年にローマ来日に合わせて設立された公認ファンクラブ「ROMA CLUB TOKYO」の会長を務める。現在はJリーグ入りを目指すサッカークラブ南葛SCで広報、運営として働いている。自著にトッティのラストシーズンを綴ったkindle電子書籍『ローマ速報オフライン』がある。【WEB】ASローマ速報〜ROMANISMO | 2004年からローマの魅力を伝えるロマニスタサイト(asromasokuhou.com) 【Twitter】如月【ASローマ速報⚡ROMANISMO official】(@roma_sokuhou)