4月12日発売の『フットボリスタ2023年5月号』は、現代サッカーにおいて復権しつつある「ウイング」を大特集。その連動企画としてWEBではJリーグの注目株を含め、サイドを主戦場に活躍する国内外の選手にスポットを当てる。第4回は、今月開催されるU-20W杯のメンバーにも選ばれた川崎フロンターレの永長鷹虎にフォーカス。河治良幸がユニークな“逆足ウイング”のプレーを解剖する。
世界的に見ても複数の選択肢を持てる器用なサイドアタッカーは増加傾向にあるが、その反面、局面を打開できる絶対的な武器を持ったウインガーは少なくなってきているように思える。そうした流れの中で、日本から三笘薫というワールドクラスのタレントが出てきたことは素晴らしい。そして、彼が育った川崎フロンターレからまた一人、ユニークなドリブラーが世界に打って出ようとしている。U-20日本代表に選ばれた永長鷹虎だ。
カットインからの左足シュートという絶対的な武器
“逆足サイドアタッカー”や“逆足ウイング”というワードが流行して、だいぶ時間が経つ。ガレス・ベイルやディ・マリアといった選手たちがその代表格だが、ポジショナルプレーの概念に基づく攻撃スタイルが普及する中で、このポジションの選手にも多様な働きが求められるようになってきた。
永長はそうした時代性に逆行するように、もっぱら右サイドでの鋭いカットインから左足でシュートを打ち抜くという尖った武器を磨き続けている“逆足ウイング”の一人だ。川崎の鬼木達監督もそうした特性を尊重してか、同じレフティの家長昭博というレジェンドが君臨する右ウイングのポジションであえて勝負を挑ませている。
U-20日本代表の冨樫剛一監督も、ほとんどのアタッカーが複数ポジションをマルチにこなす中で、永長に関しては[4-2-3-1]の右サイドアタッカーとして起用し続け、永長もその期待に応えてきた。最近はフリーで縦に飛び出す“裏抜け”、インサイドに流れてのワンツーといった引き出しも増やしているが、基本的にはいかに良い形でカットインからの左足シュートに持ち込めるかが、彼が輝くためのキーポイントと言える。最大のスペシャリティが活きてこないと、その他の引き出しも威力が半減してしまうからだ。
最高の教材は家長?オフ・ザ・ボールの課題を克服
左足に絶対の自信を持つ永長だが、意外に右足の使い方がうまい。あくまで武器は左足なのだが、左からのサイドチェンジを右足でコントロールして、そこから左足のボールタッチに移行するのが典型的だ。ドリブルのタッチも細かく、相手を軽く動かして抜く時は左足しか使わないが、大きなターンを入れる直前に右足のタッチを入れることで、相手の対応を読みにくくしている。ただ、左足シュートに持ち込む1つ前に使うタッチはだいたい左足のアウトで、おそらくそれが彼のシュートの間合いを作るためのベストな形なのだろう。……
Profile
河治 良幸
『エル・ゴラッソ』創刊に携わり日本代表を担当。Jリーグから欧州に代表戦まで、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。セガ『WCCF』選手カードを手がけ、後継の『FOOTISTA』ではJリーグ選手を担当。『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(小社刊)など著書多数。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。タグマにてサッカー専用サイト【KAWAJIうぉっち】を運営中。