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ホーランドの活躍で改めて脚光…90年前に50ゴールを奪った豪快な男の伝説

2023.05.09

 今シーズンのイングランドでは、マンチェスター・シティのノルウェー代表FWアーリング・ホーランド(22歳)が様々なゴール記録を塗り替えて話題を集めている。

 ハーランドは今季公式戦で既に50ゴール以上を稼いでおり、プレミアリーグのシーズン最多ゴールなど、サッカー界の英雄たちが築いてきたゴール記録を次々に更新している。イングランドのトップリーグの選手が「50ゴール」以上を達成するのは、92年ぶりの快挙となった。前回、その大台に到達した選手というのが、元イングランド代表のFWトム・ウォリングだ。ウォリングはアストンビラ時代の1930-31シーズンにシーズン50ゴール(リーグ戦49+FAカップ1)を叩き出したのである。

リーグ戦49ゴールで得点王に輝く

 そのウォリングの風変りな日常を英紙『The Times』が伝えているので紹介しよう。ウォリングは、イングランドのフットボールの歴史においてシーズン最多ゴールを決めているディキシー・ディーン(1927-28シーズンに公式戦63ゴール)同様、マージーサイドのバーケンヘッドで生まれると、偉大な先輩の足跡をたどるように、トランメアで選手キャリアをスタートさせた。

 当時3部リーグに在籍していた同クラブで結果を残したウォリングは、1928年に1部のアストンビラに鳴り物入りで加入。すると、噂の点取り屋を一目見ようと、初めて出場したリザーブチームの試合に2万3000人もの観客が集まったという。

 ちょうど今のホーランドのように、ウォリングもスピードとパワーを兼ね備えた屈強なFWで、空中戦に強く両足も使えた。すぐにビラでもゴールを量産し始めたウォリングは、1930-31シーズンにリーグ戦49ゴールを叩き出して得点王に輝くのだった。

アストンビラでリーグ戦49ゴールを挙げる活躍を見せたウォリング(右端)

ピッチ外で残した数々の豪快伝説

 彼はピッチの外でも、とにかく豪快な男だったという。ある日、ビラのクラブ職員がウォリングの自宅を訪れると、彼はリビングに鶏を飼って一緒に生活していたという。そして、月曜日の朝に練習のため本拠地ビラパークに来ると、スタンドを歩き回って土曜日の試合で観客が飲み残したビールを集めて飲んでいたというのだ。

 監督に対しても豪快な態度を崩さなかった。当時、1試合につき30シリングの給与を貰っていたウォリングは、前線に残らずに少しは戻って守備面でも貢献するように監督から指示を受けると「俺に2つの仕事を求めるなら1試合60シリングを払ってくれ」と返したそうだ。

 そして、当時アーセナルで黄金期を築いていたハーバート・チャップマン監督がビラパークに乗り込んできた時には「俺が欲しいんでしょ? 俺はアーセナルのどの選手よりもレベルが上だからね」と名将に言い放ったという。

 ウォリングはイングランド代表でも結果を残し、1931年から1932年にかけて5試合に出場して4ゴールを決めている。常にゴールを奪い続けたウォリングは、カテゴリーを落としながらも40歳近くまでプレーを続けたそうだ。そして1980年、74歳でこの世を去った時、偉大な点取り屋の遺灰はビラパークのゴール前にまかれたという。

 ホーランドが次々に記録を塗り替えることで、イングランドではこうして過去の英雄にも再びスポットライトが当てられている。


Photos: Getty Images

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アーリング・ホーランドアストンビライングランド代表ハーバート・チャップマンマンチェスター・シティ

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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