CLでは欧州王者に輝いた09-10シーズン以来となる4強入り、コッパ・イタリアでは2季連続の決勝進出を果たしたインテルだが、セリエAでは打って変わって取りこぼしが目立っている。第34節終了時点で4位、CL準決勝で激突する5位ミランとの勝ち点差も2と、来季のCL出場権さえ確保できていない状況だ。カップ戦とリーグ戦で異なる顔をのぞかせている理由をインテリスタの白面(@Hakumen9b)さんが考察する。
なんとも、今季は評価の難しいシーズンになった。そう感じているインテリスタは多いのではないだろうか。
有識者達は今季のインテルを、「まるでジキルとハイドのようだ」と称した。言うまでもなく、ナポリの独走を許し、来季CLに出られるかもわからなくなったリーグ戦と、国内外で歩みが止まらないカップ戦とのギャップを指す。
この極端な戦績の違いはどこから来るのか。あるいは、本質的には同じチームながら、偶然にも結果が極端なコントラストを形成しただけなのだろうか。この問に関して、筆者が思うところは3つある。
1にコンディション、
2にタイミング、
3フォーカスだ。
長くなるが、順を追って見ていこう。
ディマルコなしには語れないカップ戦の快進撃
まず「1」のコンディションについては、1月以降のインテルの戦績を見れば一目瞭然だ。主力のコンディション不良が、結果に色濃く反映されたのである。
ターニングポイントになったのはCLラウンド16、FCポルト戦の第1レグである。辛くも勝利をもぎ取ったが、その代償としてチームのキーマンであるシュクリニアルとディマルコが負傷交代し、以後の離脱を余儀なくされている。
シュクリニアルはこの試合を最後に、未だ戦線を離れたままだ。「代役確保が難しすぎる」という理由もあって、フリー移籍もやむ無しと残留させたCBのスターターを、チームは欠くことになった。元々3バックで戦うチームなこともあり、この影響はあまりにも大きかった。
ディマルコはディマルコで、不安定なパフォーマンスのチームで今季最も安定したプレーを披露してきた選手の一人だ。21-22シーズン冬の目玉補強であったロビン・ゴセンスをベンチに追いやり、実力でポジションを手に入れた彼は、自身の価値をプレーで証明し続けてきただけに、この離脱はチームにとって大打撃となった。
実際この日以降、ディマルコをスタメンから外して戦った7試合の戦績は、1勝1分5敗という散々なものだ。翻って彼がスターター起用された9試合は、欧州での試合も含めて5勝3分1敗と、貢献度の大きさが目に見えて表れる結果となっている。
特筆すべきは、CL及びコッパ・イタリア準決勝と、復帰後に全てのカップ戦で先発出場を果たしていることだ。指揮官シモーネ・インザーギとインテルが、何に注力していたかがうかがえる。ディマルコという選手の有無は、チームが低迷期間にあっても、カップ戦で生き残った大きな理由の1つと考えてよいはずだ。
ご意見番カッサーノも掌を返したベンフィカ戦
続いて「2」のタイミングとは、誰もが予想だにしなかったカップ戦の快進撃に関し、インテルと対戦相手、それぞれの事情がうまい具合にピタリとハマったことにある。有り体に言ってしまえば「運」なのだが、ここではもう少し具体的に掘り下げていこう。
例えば先述したFCポルト戦の第1レグ、先方は主力選手の大量欠場という情報戦を仕掛けてきたことで話題になったが、これは悪手だったように思う。何せポルトはこの試合前、公式戦22試合無敗継続中と、まさに絶好調の状態にあったのだ。試合前に数々の問題を抱えていたインテルに対して、ポルト指揮官であるセルジ・コンセイソンは真正面から勢いで押し切る自信を選手達に与えることが肝要だったのではないか。「策士策に溺れる」とは言い過ぎかもしれないが、奇襲を仕掛けたことで、かえってインテルの守備意識を高めてしまった印象を受けた。
インテリスタを公言し、OBでありながら歯に衣着せぬ発言に定評のあるアントニオ・カッサーノは、「2試合とも酷い試合だった。インテルが勝ち残ったのは運がよかったから、それだけだ。真剣勝負ではあったが、内容は本当に酷い。第1レグもオタービオの退場が無ければ、スコアレスドローに終わっていた試合だよ」と古巣を酷評している。……
Profile
白面
集団心理とか、意思決定のノウハウ研究とかしています。昔はコミケで「長友志」とか出してました。インテルの長所も短所も愛でて13年、今のノルマは家探しです。