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“ケガの功名”も味方に完成した必勝の左右非対称システム。アトレティコ復調の要因に迫る

2023.05.07

W杯中断時点でリーグ4位、CLではまさかのグループ最下位に沈み、さらにコパ・デルレイでも宿敵レアル・マドリーに屈し敗退と低空飛行が続いたアトレティコ・マドリー。しかし、そのコパ・デルレイ敗退後から調子を上げ、気づけばリーグ2位にまで浮上してきた。ディエゴ・シメオネ監督はいかにしてチームを立て直したのか。復調の理由、現チームのメカニズムを分析する。

 アトレティコ・マドリーはW杯を境に変わった。7勝3分4敗で5位だったチームは21勝6分6敗で2位に(第33節終了時点)。W杯後19試合の成績、14勝3分2敗は首位を独走するバルセロナとまったく同じ。得失点差ではシャビのチームが+21(27点6失点)なのに対して、シメオネのチームが+27(39得点12失点)で上回っている。内容も“1-0のバルサ”に比べて魅力的であり、少し気が早いが今から来季が楽しみだ。

 なぜ復調したか? いくつか理由がある。

 第1に、そもそも戦力が充実していた。

 レギュラーと控え組に力の差がない、という点では2強を上回っている。特にFW。シメオネのチームは交代選手のゴール数でリーグ1位。ロベルト・レバンドフスキとビニシウス・ジュニオールがいないと2強の攻撃力はガクッと落ちるが、アトレティコ・マドリーの場合はアルバロ・モラタ、メンフィス・デパイ、アントワーヌ・グリーズマン、アンヘル・コレアのうち2人欠けても問題ない。冬の移籍市場でジョアン・フェリックスとマテウス・クーニャが去り補充はメンフィスだけと頭数は1人少なくなっているのだが、それでもこの充実ぶりである。

 第2に、体力と精神力にプラスαがあった。

 W杯前にCL敗退済みでELにすら残れず、コパ・デルレイでも1月末に敗退。2月以降はリーグ戦一本に絞れたというのは、例年以上の過密日程となった中で大きかった。また、アトレティコ・マドリーはW杯ファイナルに欧州最多の4人(ロドリゴ・デ・パウル、ナウエル・モリーナ、コレア、グリーズマン)を送り込んでいる。カタールでの活躍が自信になったのだろう。彼ら4人のプレー内容は明らかに良くなった。

 第3に、必勝の先発メンバーと並びが見つかった。

 今季シメオネは3バックでスタートして1カ月で見限り、W杯前後のそれぞれ2カ月間は4バックで、3月初めに3バックに戻して今に至っている。3バックに戻してからは8勝1敗(唯一バルセロナに敗れた)で、シーズン最高のパフォーマンスを披露中だ。

 3バックなのか、4バックなのかの論争についに終止符が打たれた感があるのだが、実はこれは“ケガの功名”だった。

“CB兼SB兼インサイドMF”を担うキーマン

 2月25日、左SBの絶対的なレギュラーだったレイニウドが重傷(十字靭帯断裂)を負った。代わりにホセ・マリア・ヒメネスを入れて4バックから3バックへの変更を余技なくされたその試合はアウェイのレアル・マドリー戦で、途中退場者を出したにもかかわらず勝利寸前までいっている。この時の内容の良さと、レイニウドに代役がいないこともあって今の形と顔ぶれになったのだった。……

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アトレティコ・マドリーディエゴ・シメオネリーガエスパニョーラ

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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