2021-22シーズンは昇格組ながら、優勝争いを演じたユニオン・サン・ジロワーズ(以下ユニオン)が今シーズンも優勝争いを演じている。ベルギーで最も予算の少ないクラブでありながら、卓越した組織的なサッカーを武器にELでも準々決勝進出。レバークーゼンに敗れて欧州タイトル獲得はならなかったものの、昨シーズン成し遂げられなかったリーグ優勝に向けて、優勝プレーオフを戦う。
昨シーズン大躍進を果たしたユニオンだったが、監督のフェリーチェ・マッズをアンデルレヒトに引き抜かれ、エースのデニズ・ウンダブがブライトン、デンマーク代表MFキャスパー・ニールセンはクルブ・ブルッヘと移籍。三笘薫は保有元のブライトンへ復帰と主力もチームを離れてしまった。
後任にはアシスタントコーチを務めていた40歳のカレル・ヘラールツが就任。かつてベルギー代表MFとしてスタンダール・リエージュやクルブ・ブルッヘで活躍した41歳は、ユニオンで監督デビューを飾ることとなった。
ELで大健闘
多くの主力選手が引き抜かれたうえ、監督は新人、さらには欧州カップ戦参戦による過密日程と多くの難問が重なったこともあり、開幕前は低迷を予想する声が多かった。
しかし、アナリストの予想を大きく裏切り開幕から好発進を見せる。ノルウェーのボデ・グリムトから加わったナイジェリア人FWビクトル・ボニフェイスと、三笘薫と入れ替わるようにブライトンから期限付き移籍で加わったコートジボワール人FWシモン・アディングラが新戦力としてフィット。1月にはベルギー代表FWダンテ・バンゼイルをNYレッドブルズへ放出するも、PSVから獲得したU-21ベルギー代表FWヨルベ・フェルテッセン、スウェーデン人FWグスタフ・ニルソン、フィンランド人FWキャスパー・テルホらの活躍で得点力の低下を抑えている。
その躍進は国内リーグだけにとどまらず、ELでも快走を見せた。CL予選ではレンジャーズに破れたものの、ELではウニオン・ベルリン、ブラガなど強豪を撃破しGSを首位で突破。ベスト16で再び対戦したウニオンを返り討ちにした。準々決勝でレバークーゼンに破れたものの、8強入りしてみせた。
国内リーグでは首位のヘンクと同勝ち点の2位でプレーオフⅠへ進出。ユニオンと同じく多くの主力を放出しながらも勝ち続けたヘンクに首位の座こそ譲ったが、ヘンクはエースのオヌアチュ放出後は失速し続けており、ユニオンの逆転優勝も十分にあり得る状況となっている。
前半戦を棒に振った町田は虎視眈々とレギュラー奪取を狙う
昨シーズン途中にユニオンの一員となった町田浩樹は今シーズングローインペイン症候群によって前半戦を棒に振ったが、年明け1月15日のロイヤル・アントワープ戦で復帰。チームが好調だったこともあり即定位置確保とはいかず先発フル出場は6試合にとどまっているものの、3月29日にユニオンへの完全移籍が発表されており、首脳陣からの評価のほどをうかがわせる。
起用されているのは主に3バックの左や中央。左CBはベルギー代表にも選ばれるDFシーベ・ファン・デル・ヘイデン、中央は197cmのイングランド人DFセバスティアン・バージェスがレギュラーでプレーしており、ポジション争いのライバルとなっている。プレーオフⅠでは出場機会を増やし、2018-19シーズンの伊東純也以来、日本人選手2人目となるベルギーリーグタイトル獲得に期待したい。
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シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。