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「アカデミー・オブ・フットボール」ウェストハムU-18が24年ぶりにイングランドの頂点に

2023.04.30

 「アカデミー・オブ・フットボール」ことウェストハムのユースチームが、24年ぶりにFAユースカップを制した。

 4月25日、イングランドのユース世代のチャンピオンを決めるFAユースカップ決勝がアーセナルの本拠エミレーツ・スタジアムで開催された。ファイナルでウェストハムU-18と対戦したのは、アーセナルやイングランド代表で活躍したジャック・ウィルシャー(31歳)が今季からチームを率いるアーセナルU-18。“ウィルシャー監督”にも注目が集まったが、結果は5-1でウェストハムが下馬評通りの強さを見せつけて栄冠を手にした。

3万4000人の前で完勝

 そして今、新たな黄金世代が産声を上げようとしている。今季のウェストハムU-18チームは、それほどまでに異次元の強さを見せつけてきた。U-18世代を対象にした国内リーグのプレミアリーグU-18では他を寄せ付けず、南部地区で2試合を残して優勝。そしてユース世代の国内カップ戦であるFAユースカップでも勢いは止まらず、準決勝でサウサンプトンを6-1で撃破すると、準決勝でマンチェスター・シティに競り勝ったアーセナルとファイナルで激突した。

 名門アカデミーの復活である。ウェストハムの下部組織は数々の逸材を生み出してきた。古くはボビー・ムーアやジェフ・ハースト、その後はリオ・ファーディナンドやジョー・コール、マイケル・キャリックといった歴代のイングランド代表プレーヤーを輩出し、「アカデミー・オブ・フットボール」と呼ばれてきた。

 次世代のスター候補生を一目見ようと、エミレーツ・スタジアムには平日のナイターだというのに3万4000人もの観客が詰めかけた。7000人以上ものハマーズファンが敵地まで駆けつけたという。その中には馴染みのある顔も。昨季までクラブキャプテンを務め、今年からスポーツダイレクターを務めるマーク・ノーブル、さらにトップチームで腕章を巻くイングランド代表MFデクラン・ライスも、翌日にリバプールとの試合を控えながらも後輩たちの応援に訪れた。

 そんな中で、ウェストハムの若き才能が躍動。圧巻のゴールショーを披露したのだ。80年代にウェストハムで活躍し、現在は同クラブのU-18チームを指揮するケビン・キーン監督(56歳)は「とても誇らしい」と試合後にコメント。2019年からチームを率いるOBは「私は他のどんなチームよりも、今のこのチームを選ぶ。試合前に選手たちにそう伝えた」と英紙『Daily Mail』などで明かした。

 そして、こう続けた。「我われは次のデクラン・ライスや次のベン・ジョンソンを生み出そうとしているんだ。そして、夢は次のマーク・ノーブルを輩出すること。彼のようにウェストハム一筋でプレーしてくれる選手をね。こういう夜が、その手助けになるはずだ」

 試合後、ウェストハムのサポーターは歓喜の大合唱。ライスも控室を訪れて選手たちと喜びを分かち合ったという。また、サポーターはウェストハムでもプレーした敵将ウィルシャーに対して「お前は明日にはクビになる♪」と、ジョークを交えたチャントを送っている。

 だが、選手たちは決して満足していない。1999年以来24年ぶりのFAユースカップ戴冠から4日後、主力選手たちはU-21チームのリーグ戦に出場し、しっかりと勝利に貢献した。中でも注目は、イングランドU-19代表FWディビン・ムバマ(18歳)だ。FAユースカップで大会8ゴールを決めた他、U-21リーグでは今季13ゴール。昨年11月にトップチームでデビューを果たすと、今年3月のUEFAカンファレンスリーグで初ゴールまでマークしている。

エースとしてウェストハムU-18をけん引するムバマ

 その他にも、この世代にはMFジョージ・アーシー(18歳)、DFケーラン・ケイシー、FWカラム・マーシャル(18歳)、FWギディオン・コドゥア(18歳)といった有望株ぞろい。今シーズン、ファーストチームは残留争いに巻き込まれているが、“未来”の担い手たちに期待が懸かる。

Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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