3ゴール8アシストでキャリアハイ更新中の菅原由勢。右SB専任で「ストロング」を明確化

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2023.04.26

現在オランダリーグで4位につけ、UEFAカンファレンスリーグでもベスト4に進出したAZ。今季リーグ戦で右SBながら3ゴール8アシストを記録している菅原由勢は、絶対的な主力として好調のチームを牽引している。今や「オランダリーグでも屈指の攻撃的右SB」としての評価を確立した22歳の成長の軌跡と未来を考察する。

　AZが4月23日のRKC戦に3-0と勝利した直後のことだった。『デ・テレフラーフ』紙のAZ番、スティーブン・コーイマン記者が「今日のユキは本当に良かったな」と私に声をかけた。

　ユキこと菅原由勢がRKC戦で披露したパフォーマンスは、私もとても良かったと思う。まずは8分、ピンポイントのクロスをMFスベン・マイナンスの頭に合わせアシストをマーク。その後も、頭脳的なポジショニングでビルドアップの起点を作り、RKCの中盤に生じたスペースで待つ味方に気の利いたパスを何度も通した。その週、菅原は『デ・テレフラーフ』紙、『アルヘメーン・ダッハブラット』紙、『フットボール・インターナショナル』誌のベストイレブンを総なめにした。

菅原がアシストを記録したRKC戦のハイライト動画

「右SBのスペシャリスト」としての絶大な信頼

　アカデミーから昇格したばかりの選手たちの成長と、効果的な補強が効を奏し、今季リーグ4位につけるAZはなかなか選手層が厚い。中でもCB陣は6番手まで控えている。例外は右SBのポジション。アスラク・ウィトリーが昨年夏の市場でルドゴレツ（ブルガリア）に去ると、菅原のライバルはCBを本職とするパンテリス・ハジディアコス（ギリシア代表）だけになった。今季序盤戦は菅原が右ウイング、ハジディアコスが右SBを務めることも多々あった。

　しかし、ハジディアコスに右SBの適性はなかったのだろう。昨年11月6日のRKC戦を最後にハジディアコスはCBに、菅原は右SBに専念している。そのことは2人にとっても、チームにとってもプラスに働いている。26歳のパンタ（ハジディアコスの愛称）は若いDFラインのリーダーとして振る舞うようになり、菅原はオランダリーグでも有数の右SBになった。

　よほど菅原はクラブから信頼されているのだろう。AZは冬の移籍市場で右SBを補強しなかった。右SBのバックアップ不在による歪みは、菅原が警告累積による出場停止処分で欠場した3月11日のフローニンゲン戦で表れた。パルカル・ヤンセン監督はリザーブチームのMFフェッデ・デ・ヨンクを右SBとして抜擢したのだ。各メディアは19歳の健闘に高い採点を与えたが、現場で取材した私の目からするとそれはご祝儀。慣れないポジションに苦戦するフェッデ・デ・ヨンクの姿は少し気の毒だった。

　今のAZには菅原しか右SBがいない。こうして菅原は『多機能プレーヤー』からいったん卒業し『右SBのスペシャリスト』として腰を落ち着けることになった。AZ加入直後から3年半、菅原は右SBと右ウインガーを兼任しつつ、時にはMF、左SBとしてもプレーした。戦術的に使い勝手のいい選手だったが、「菅原のストロングってなんでしたっけ」と菅原の長所が薄れたことに疑問を呈する日本サッカー関係者もいた。

　だが、昨秋から右SBに専念し始めた菅原は、『最後尾右からのゲームメイカー』『多種多彩のクロスを蹴り分ける職人』『右ハーフスペースとバイタルエリアにタイミング良く現れる危険なアタッカー』『右サイドのダブル・コンビネーション、トリプル・コンビネーション』など、遺憾なくストロングポイントを発揮する『相手にとって怖い右SB』になった。

　菅原が日本代表に復帰したのは、この追い風に乗った最中の3月だった。

　ウルグアイ戦では浅野拓磨に決定的なスルーパスを、伊東純也にはプレアシストとなる右オープンへのミドルパスを通した。ともにAZで何度も快足アタッカー陣に通してきた菅原十八番のパスだった

　RKC戦で1アシストを記録したことにより、菅原のリーグ戦スタッツは3ゴール8アシスト。2ゴール（20-21シーズン）・3アシスト（21-22シーズン）の自己最高記録を大幅に更新中だ。