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「私が目指すのは、いわば反ポジショナルプレー」。ブラジルの異才、フェルナンド・ジニスとは何者か?

2023.04.22

ヨーロッパの戦術論壇で今、一人のブラジル人監督が話題を集めているという。1年前からリオデジャネイロの名門フルミネンセで2度目の指揮を執ると、「近年で最も攻撃的で、最も魅力的なプレースタイル」と国内でも称賛を浴び、カタールW杯後いまだ決まらないセレソン新監督の有力候補にも推される、フェルナンド・ジニス(Fernando Diniz)だ。2009年から母国で指導者キャリアを積んできた49歳の知られざるプロフィール、その破壊的で美しいサッカーが生まれた背景を紹介しよう。

ペップとの共通点は「ボールを握る」という一点しかない

 「ボールポゼッションを重視することから、私が目指すプレースタイルを(ポジショナルプレーを標榜する)ペップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ監督)になぞらえる人が少なくない。しかし、彼らはまったく誤解している。私とグアルディオラが目指すフットボールの共通点は、『ボールを握る』という一点しかない。

 彼は、選手たちにしかるべきポジションを守ってプレーすることを望む。一方、私は選手たちがポジションにこだわることなく、できるだけ近い位置にいて、頻繁にポジションを入れ替えながら自由にプレーすることを求める。それは、ポジショナルプレーと対極にあるスタイル、いわば反ポジショナルプレーとでも呼べるものだろう」

 「私が最も強い影響を受けているのは、テレ・サンタナが率いた1982年のセレソンや、1992〜93年のサンパウロといった過去のブラジルのチーム。近年の欧州ビッグクラブではない」

 フェルナンド・ジニス。この知的な風貌を持つ49歳の戦術は、欧州では「リレーショニズム」と名づけられた。しかし、彼の母国ブラジルにはそのような表現はない。「ジョーゴ・フンシオナル」(ファンクショナルプレー)、あるいは端的に「ジニジスモ」(彼の苗字をもじった新語で「ジニス主義」の意味)と呼ばれる。

ジニジスモとは「パパパパパパパ!?」

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フェルナンド・ジニスブラジルブラジル代表ブラジル全国選手権フルミネンセリオデジャネイロ戦術

Profile

沢田 啓明

1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。

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