7歳からバルセロナのアカデミーに所属し早くから大器として注目を集めたが、16歳でパリ・サンジェルマンへと移籍。そして19歳となった今季、母国オランダの名門PSVに加入し、ついにその才能が覚醒した。14ゴールは得点ランキング首位タイ、それだけでなく様々なポジションで輝きを放ち、今や「オランダリーグで最高の選手」と評価する声もある。オランダ在住の中田徹氏にチャビ・シモンスの活躍の理由を読み解いてもらおう。
チャビ・シモンスは昨季、パリ・サンジェルマンで何度かトップチームでプレーしたが、出場時間は微々たるものだった。
「もう自分は19歳。試合でプレーすることはとても大事。コンフォートゾーン(快適な場所)から抜け出して、PSVで新たなステップを踏みたい」
そう決心して、シモンスはアイントホーフェンへ移り住んだ。
シモンスにとって今季は実質プロ1年目。シーズン前の抱負は「出場機会のチャンスは必ずやってくる。それをしっかり両手で受け取ってモノにしたい。一度、掴んだモノは手放したくない」というものだった。
そのチャンスは、新シーズン到来を告げるスーパーカップ『ヨハン・クライフ・スハール』で早くも訪れた。
アヤックス相手の「一発回答」
昨年7月30日、カップ王者のPSVはリーグ覇者のアヤックス相手に4-3とリードしていた。後半28分、ルート・ファン・ニステルローイ監督はエースのコーディ・ガクポをベンチに下げ、シモンスをピッチに入れた。アディショナルタイム、左ハーフスペースでボールを持ったシモンスはカットインドリブルからサイバリにパスを出して、アヤックスの最終ラインの裏へフリーランニング。絶妙のタイミングでサイバリからのリターンを受けたシモンスは、GKホルターを冷静にかわして無人のゴールにシュートを蹴り込み、PSVのヨハン・クライフ・スハール戴冠を決定づけるチーム5点目を記録した。
オランダリーグの開幕戦(対エメン)は、その1週間後だった。
ファン・ニステルローイ監督はXavi Simonsの名をスタメン表に書き込んだ。前半18分、シモンスは自陣の深い位置で敵のボールを奪い取ると一気に60mのロングドリブルを敢行。中央で敵のマークをしっかり引きつけてから丁寧に出したシモンスのラストパスを、バカヨコが右45度のシュートで仕留めた。
さらにシモンスは第2節のフォーレンダム戦から3試合連続2ゴール弾で一気に6ゴールを稼ぐ。『ヨハン・クライフ・スハール』で得たチャンスをモノにしたシモンスは、最高のシーズンスタートを切った。
類まれな多機能性
そして、彼は“一度掴んだモノ”を決して手放さなかった。29節を終えた時点で、シモンスはリーグ戦全試合で先発出場を続けている。出場時間数2375分はチーム内最長。昨季のシモンスがPSGでリーグ戦6試合128分、クープ・ドゥ・フランスで3試合190分しかプレーしなかったのと比べると雲泥の差だ。
しかも、シモンスは14ゴールを記録し、ドゥビカス(ユトレヒト)と並んでオランダリーグの得点王争いで首位に立っている。7アシストはジョイ・フェールマンに次ぐチーム内2位だ。「シモンスはPSVのベストプレーヤーだ」という意見は非常に多い。……
Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。