各国代表チームの2022年W杯を総括し、それぞれの再出発を追ったフットボリスタ最新号。その制作時点では未定だったベルギー代表の新監督に、ドメニコ・テデスコが就任した。ロシア大会3位を経たカタール大会でグループステージ敗退に終わった“レッドデビルズ”は、1985年生まれの「モダンな指導者」の下、どのようなチームに生まれ変わるのか。続報をお伝えする。
2月、ベルギー代表の監督に就任したドメニコ・テデスコは、7人のベテラン選手に自己紹介のメッセージを送った(以下カッコ内の数字は3月6日時点の年齢/代表通算出場試合数)。
GK ティボ・クルトワ(30歳/100試合)
DF ヤン・フェルトンゲン(35歳/145試合)
DF トビー・アルデルワイレルト(34歳/127試合)
MF アクセル・ウィツェル(34歳/130試合)
MF ケビン・デ・ブルイネ(31歳/97試合)
FW ドリース・メルテンス(35歳/109試合)
FW ロメル・ルカク(29歳/104試合)
カタールW杯で主将を務めたエデン・アザールはすでに代表引退を表明済み。ここに挙げたベテラン勢のことを、テデスコは「7人の主将」として丁重に扱い挨拶した(※その後アルデルワイレルトは3月6日、代表引退を発表した)。
「ベルギー代表は世代交代が喫緊の課題」と言われて久しいが、新監督は世代交代を目的にしたチームビルディングはしない構えを見せる。
「イタリア代表のジョルジョ・キエッリーニは36歳(2021年に行われたEURO2020当時)で欧州チャンピオンになりました。アルゼンチン代表のリオネル・メッシは35歳でW杯を制しました。年齢は関係ありません。最高の選手をピッチに送るだけです。『黄金世代』について、私は多くのことを読んだり聞いたりしました。彼らの時代はまだ終わっていません。ベルギーにはタレントがたくさんいます。ベテラン、25、26歳くらいの選手、若いビッグタレントをミックスしてチームを作るのがいいと思います」
デ・ブルイネに笑顔は戻るのか?
W杯期間中、「7人の主将」のパフォーマンスは期待外れに終わった。中には所属クラブで調子が悪かったり、負傷を抱えたままW杯を迎えたりした選手もいる。しかし、デ・ブルイネはマンチェスター・シティで好調だった。その覇気が代表チームでは消え失せ、彼はつまらなそうにプレーしていた。グループステージ第1節のカナダ戦で試合が一時中断した時、デ・ブルイネがアルデルワイレルトに厳しい物言いをし、口論に発展してしまった。チームと自身へのフラストレーションが爆発したシーンは、2022年W杯のデ・ブルイネを象徴していた。
そんな背景もあって、ベルギー人記者とテデスコ新監督の間で、こんなやり取りがあった。
――ケビン・デ・ブルイネはW杯中、表情が沈んでいました。どのように彼のスマイルを取り戻しますか?
「彼が笑みを見せないのには理由があります。私なら彼と話し合います。このことは彼だけの問題ではありません。もちろん、代表の活動時間は短い。それでも時間をうまく使って選手たちと話し合い、彼らのスマイルを取り戻すことだけでなくモチベーションもかき立てたい。そして最高のパフォーマンスを発揮させたい。そのことが最も重要です」
さらに、テデスコはW杯でのベルギー代表のことに少し触れた。
「私はW杯だけでなく、親善試合も見ました。例えば『もっと一体感が必要だった』とか『もっと守備を良くしないと』とか、ここでいろいろしゃべると自ずと前監督(ロベルト・マルティネス)に対する批判になってしまいますが、それは私の本意ではありません。私は監督という仕事がタフであること、W杯に向かう準備の難しさを理解しています。しかし、ベルギーがW杯をグループステージで終えたのは、何かがうまくいかなかったから。私は選手・スタッフと話し合って、ベルギー代表を改善していきたい」
レッドブル・フィロソフィと柔軟性
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Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。