ブンデスリーガで最下位に沈むシャルケ。苦しむチームにあって、上月壮一郎が溌溂としたパフォーマンスを見せ希望の星となっている。セカンドチームから抜擢された23歳の日本人アタッカーはどういった特徴を持つ選手なのか、そのプレーを分析する。
W杯明けのブンデスリーガ第16節シャルケ対フランクフルト。フランクフルトでは中核を担う鎌田大地、シャルケでは最終ラインでコンスタントにプレーするベテランの吉田麻也がスタメンとして起用された。
ただこの試合には、シャルケのユニフォームを身に纏いピッチに立った日本人プレーヤーがもう1人いた。それが上月(こうづき)壮一郎だ。
今季2部から1部に復帰したシャルケは残留を目指して戦っているものの、シーズン序盤から苦しい戦いを強いられている。第22節を終えた時点で3勝7分12敗、16得点42失点と最下位に沈む。そんな中、チームの救世主として期待されている。
セカンドチームから昇格した彼のことを詳しく知る人は多くなかった。しかし、そのプレーを見て希望を託すシャルケファンが増えている。J1での出場経験がなく、日本での知名度もそれほど高いとはいえないにもかかわらず、シャルケの救世主となり得る上月はいったいどんなプレーを見せているのか?
持ち味はドリブル
上月は2000年生まれ。各年代の世代別日本代表としてプレーしてきた京都出身の22歳は、当時J2の京都サンガでプロキャリアをスタートさせる。2022年冬にドイツ5部デューレンに移籍し、11試合で5得点5アシストを記録。同年夏にシャルケのセカンドチームに加入すると、レギオナルリーガ(ドイツ4部)で14試合8ゴール5アシストの活躍を見せた。この活躍が評価され、2023年冬にシャルケのトップチームに昇格、ブンデスリーガのピッチに足を踏み入れることに。
フランクフルト戦でデビューを飾ると、続くRBライプツィヒ戦では1-6の大敗となったものの記念すべき初ゴールをマーク。1年の間にドイツ5部からセカンドチームを経てブンデスリーガデビュー、そして初得点と急激なステップアップを見せている。
現在チームで上月が起用されているのは[4-2-3-1]の右SH。基本的に外に張ってプレーをする上月の持ち味は、ドリブルでの突破力だ。180cmながらボールタッチは細かく、それでいてスピードと推進力を兼ね備えたキレのあるドリブルは、ブンデスリーガにおいても大きな武器となっている。フランクフルト戦では、マッチアップしたスピードのあるWBアンスガー・クナウフや、ブンデスリーガ屈指のDFであるエバン・エンディカをも振り切ってみせた。
また、ターンの技術にも長けている。敵の守備陣のギャップを見つけて内側に絞り、鋭いターンで前を向くことが可能だ。ブンデスリーガ初ゴールとなったRBライプツィヒ戦の得点はこのターンからで、エンディカと同じくブンデスリーガ屈指の若手DFヨシュコ・グバルディオルをかわして挙げたものであった。
彼の強みとなる攻撃面を切り取ってみれば、日本代表でも通用するレベルにあるのではないだろうか。
もう1人の救世主加入で守備は比較的安定したが…名門シャルケの現状
上月個人のパフォーマンスを見るうえで、チームの機能性への言及は欠かせない。どういった環境に置かれており、どういった役割を与えられているのかを知る必要がある。では、シャルケの現状はどうなっているのか。……
Profile
とんとん
1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。