1月21日にアンフィールドで行われたプレミアリーグ注目の「中位対決」は0-0の痛み分けに終わった。19試合で勝ち点29(8勝5分6敗・34得点25失点)、首位と21ポイント差、4位と10ポイント差の9位で今シーズンを折り返すことになったリバプールの現状を、『リバプールFCラボ』で戦術班を担うトリコレッズ(@YLfc91)さんが考察する。
「どんぐりの背比べ」――。2022-23シーズンのプレミアリーグ第21節、リバプール対チェルシーの試合を最大限穏便に表現するとこうなるだろう。
悩める名門同士の対決となった一戦は、よく言えば拮抗した、悪く言うと決め手を欠いた展開のまま、スコアレスドローで終了。この試合をリバプール視点で振り返りながら、今シーズンの彼らが抱える問題点を洗い出してみよう。
前線からの中途半端なプレスが致命傷に
試合は、開始直後にチェルシーがCKから先制未遂(オフサイドで取り消し)、その後リバプールもサラーの抜け出しからガクポのシュートと、お互い1回ずつの決定機を迎えた後は膠着。両チーム、ビルドアップからの展開、あるいは相手のビルドアップのミスをかっさらい、ショートカウンターでゴールへ向かうシーンが散見される形となった。
ここで気になったのがリバプールのプレッシングだ。そして今シーズン、リバプールが問題を抱え続けているのも、そのプレッシングである。
前半、[3-4-2-1]の形でビルドアップするチェルシーの3バックに対し、リバプールは3トップがそれぞれ対応。この際、チェルシーがやや右寄り非対称の3バックを敷いていたこともあって、3トップの中央ガクポと右サラーは、相手センターハーフ2枚(ジョルジーニョ、ルイス・ホール)への縦パスを警戒する役割を担っていた。また、リバプールの両インサイドハーフ(ナビ・ケイタ、チアゴ・アルカンタラ)も相手センターハーフを警戒し、都合4枚で中央を締める形となっていた。
しかし、こうなると当然サイドが空く。チェルシーは右CBのチャロバーから右ウイングバックのツィエクへと展開、そこにリバプールの左SBロバートソンが釣り出される。すると今度はチェルシー右シャドーのコナー・ギャラガーがロバートソンの裏のスペースに抜け出て一丁上がり。この形が前半7分や15〜16分など、継続的に見られたことが気になっているのだ。プレスが連動せず、明白な奪いどころを設定できていない。そもそもインサイドハーフの脇はリバプールの構造上のウィークポイントだが、チーム全体のインテンシティ低下に伴ってそれがかなり大きな穴になっている。この試合ではチェルシーの拙攻に助けられた面もあるが、相手によっては致命傷だ。
また、チェルシーのセンターハーフを消し切れずにビルドアップを許す形も見られた。先ほども述べたように、リバプールはチェルシーの中央を使ったビルドアップを相当警戒しており、サラーやガクポは相手センターハーフの位置をかなり確認しながらCBへのプレスを行っていた。だが、チェルシーが少し幅を取ったり前後にボールを動かしたりすると、途端にプレスの狙いが曖昧に。ジョルジーニョやホールを消し切れず、中を使われるという形がたびたび見受けられたのだ。
これは例えば21分ごろ、ガクポがジョルジーニョの位置を見ながらチアゴ・シウバに寄せたものの、その後の連動が乏しく、結局ボールのアングルを変えられてジョルジーニョを使われたシーンが象徴的だ。後半、チェルシーが4バックとなってからもアンカーを消し切れない問題は散見された。
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Profile
トリコレッズ
LFCラボライター・戦術班所属。2005年、「イスタンブールの奇跡」でリバプールファンに。少年サッカー時代にCBだったこともあり、CBの選手を偏愛している。Jリーグでは横浜F・マリノスのサポーター。