イングランド女子1部ウィメンズ・スーパーリーグでは、15日に開催された第11節でビッグロンドンダービーが実現。2位アーセナル・ウィメンが首位チェルシー・ウィメンを本拠エミレーツスタジアムで迎えた大一番では、4万5000人以上のサッカーファンが両チームが1点を奪い合った白熱の一戦を見守った。そのホームチームが男子を応援する“グーナー”(アーセナルファンの愛称)をうまく取り込んでいると指摘するのは、自らも“ガチグナ”である作家のカルロス矢吹氏。PR戦略における「仕掛け」の数々を、自身の体験談も交えながら紹介してもらった。
『footballista』をご覧のみなさん、はじめまして。作家のカルロス矢吹と申します。表題の通り、“ガチグナ”こと熱狂的アーセナルサポーターを自負しております。自己紹介がてら、サポーター遍歴を記しておきますと。
17歳の頃、2002年日韓W杯に向けて家が『スカパー!』を導入し、サッカー中継を観るようになり。当時稲本潤一選手が所属していたため、なんとなくアーセナルの試合を観てみたら、あっという間にその美しいフットボールに魅了され、周囲に生涯アーセナルファンを宣言。最早伝説の無敗優勝もリアルタイムで経験しました。
2009年から3年間はノースロンドンに拠点を置き、エミレーツスタジアムにも通えるだけ通い切りました。昨年には同じく“ガチグナ”として有名な笹木かおりさんと一緒にTBSラジオ「アフター6ジャンクション」に出演し、アーセナルの21-22シーズンを追った大傑作ドキュメンタリー「All or Nothing」の魅力を1時間たっぷり語ったりしております。
さて、前置きが長くなりましたが、今回の主題です。そんな“ガチグナ”の僕が、ここ2年ほどで急にアーセナル・ウィメン(アーセナルの女子チームですね)も同時進行で熱烈に応援するようになりました。
もちろん、岩渕真奈選手の移籍もその一因ではあったのですが、それだけではありません。アーセナルというクラブが、ウィメンの顧客を増やすために行ったいくつかの「仕掛け」がありました。僕はそれにまんまと引っかかって、ウィメンも応援するようになったんです。今では岩渕選手のユニフォームも所有しています。
(ちなみに、この原稿を書き終えた1月18日に、岩渕真奈選手のトッテナム移籍が発表されました。よりによって最大の宿敵への移籍とは、グーナーとしては相当に複雑な思いがあります。特に、岩渕のファンを公言してはばからなかった、アーセナルOBであるイアン・ライト氏の心情は察するに余りある。ただ岩渕選手の出場時間が限られていたのも事実。日本のサッカーファンとしてはこの移籍が御本人にとって幸福な選択になることを祈るばかりであります。)
「仕掛け」が功を奏した実例として、昨年9月の国内リーグ戦、ノースロンドンダービーで4万7367人の観客をエミレーツスタジアムに集めた事実が挙げられるでしょう。ですが、贔屓目抜きにアーセナルのウィメンチームへの力の入れようは目を見張るものがあります。
じゃあ何がそんなにすげえんだ?
という話を、僕がウィメンも応援するようになった実体験をベースに、あくまで観客目線からしていこうと思います。
潜在顧客層を理解した導線の作り方
……
TAG
Profile
カルロス 矢吹
1985年宮崎県生まれ。作家。大学在学中より、グラストンベリーなど海外音楽フェスティバルでスタッフとして働き始める。以降、日本と海外を往復しながら、世界各地のポップカルチャーに関して執筆業を開始。これまでに取材で世界60ヶ国以上を歴訪。『世界のスノードーム図鑑』、『日本バッティングセンター考』など著書多数。