アトレティコの復活は道半ば。その先は終末か、新境地か【アトレティコ 0-1 バルセロナ】
最終的に3位となったものの苦しんだ昨シーズンに続き、2022-23も前半戦は低調なパフォーマンスが目につき不振にあえいだアトレティコ・マドリー。W杯による中断があった中、チーム復調の兆しは見えたのか。アトレティであり自身のnoteで毎試合レビューを行っているがーすけ氏が、再開後の変化に着目しつつバルセロナ戦を分析する。
W杯明け初戦のエルチェ戦を2-0で勝利したアトレティコは、ミッドウィークのコパ・デルレイ3回戦を挟んでさっそくビッグマッチに臨む。ホームにレアル・マドリーと勝ち点38で並んで首位のバルセロナを迎えた。
2022-23前半戦はCLで屈辱のGS最下位に終わり、ラ・リーガでもカディス、マジョルカに負けるなどしてすでに優勝争いからは大きく離されてしまったアトレティコだが、カタールW杯の中断期間を経て改善されている箇所、改善を試みている箇所を中心に、バルセロナ戦をレビューしていく。
両チームのスタメン
アトレティコはステファン・サビッチ、ホセ・マリア・ヒメネス、ヘイニウド・マンダバの3CB、両ウイングバック(WB)にはナウエル・モリーナとヤニック・フェレイラ・カラスコを配置。中盤には売り出し中の19歳パブロ・バリオスを起用し、2トップはアントワーヌ・グリーズマンとジョアン・フェリックスとなった。
ロベルト・レバンドフスキとジョルディ・アルバを出場停止で欠くバルセロナはCFにアンス・ファティを起用。ペドリが左WGに入る左右非対称のシステムで試合に入った。
改善途上にあるビルドアップ構造
・直近の試合との比較
まずはW杯後、改善を見せているアトレティコのボール保持を振り返る。
両WBを高い位置に配置し、後方3枚とアンカーポジションの選手でエリアを確保。そこにIHの選手が関わり、前線にボールを送り込むことを狙う。中央のグリーズマンのタレントを最大限に生かすことでライン間ポジションを攻略していく、有機的な前進パターンを構築している最中だ。
このシステムで生きてくるのが、この日もスタメンに抜擢されたバリオスである。バルセロナ相手の試合で守備強度の高い選手よりも彼が優先されたということは、この日も直近の試合同様のボール保持にチャレンジするという意思表示を示している。
結果的には、前半のアトレティコは効果的なビルドアップを披露することはほとんどできなかった。直近の試合では左CBにエルモソが入ることにより、まずはボール保持を安定させていたのだが、この日はエルモソの出場停止と、後述するウスマン・デンベレ対策のためにヘイニウドが起用されており、この点が最近の試合との相違点である。
また、バルセロナの前線からのプレッシング速度はここまでの対戦相手の比ではなく、アトレティコの最終ラインは落ち着いてパスを交換することができなかった。
・繰り返したボールロスト
アトレティコはこの日、ビルドアップにおいて自陣でのボールロストを何度も繰り返している。今シーズンに限らず、アトレティコの試合ではあまり見られないシーンである。それだけこの日のアトレティコの出来が悪かったのかというと、そういうわけではない。普段はミスがないのではなく、そもそも試みていないのだ。むしろこの日のアトレティコが、バルセロナのプレッシャーにさらされた環境でも積極的にパスを繋ぐ姿勢を見せていたことをまずはポジティブに捉えたい。
この日はエルチェ戦やコパ・デルレイのオビエド戦のように縦パスを何本も通し相手チームを押し込むようなビルドアップをすることはできなかったが、チームが標榜するビルドアップを明確に意識し、怖がらずにチャレンジできていた。そもそもやらないのなら、バリオスを起用している意味合いがなくなってしまう。そして、チャレンジしなければ改善点も見つからない。あまりレベルの高くない話かもしれないが、ディエゴ・シメオネのアトレティコとしてはここが新たなスタート。次のステージへの一歩であると評価したい。
・特徴を出せなかったジョアン・フェリックス
FWの人選も、ボール保持の安定を難しくさせる要因となった。相手チームがボールへの圧力を高めてきた場合はすかさず裏へ抜け出すアルバロ・モラタへロングボールを送り、そこでボールをロストしたとしても即時奪回を狙ったハイプレスに移行する、という形が最近のアトレティコの狙いであったが、シメオネはこの日のFWにモラタではなく移籍騒動の渦中にあるフェリックスを起用している。
足下でボールを受けそこから突破・展開を狙っていくフェリックスのプレーは、グリーズマンとともにカウンターの起点となり両サイドのスピードを生かした打開を生むなど一定の効果はあったものの、サイドからのクロスにゴール前で合わせる形が期待できるモラタの不在でペナルティエリア内での脅威をバルセロナに突きつけることができず、結果的に得点の期待値は高まってこなかった。また、ボールを引き取る場面でも、この日が復帰戦となったロナルド・アラウホにシャットアウトされ、前進を助けることができないシーンが目立っていた。ラ・リーガでは出場した直近3試合で4ゴールと好調のフェリックスだったが、この日はクオリティを発揮することはできなかった。
圧力を強める守備陣形
・設定された約束事
続いて、アトレティコの守備対応を振り返る。
対戦相手がバルセロナとあれば、世界中のどんなチームでも明確な意思を持って守備の約束事をはっきりさせる必要がある。この日のアトレティコは後方の選手から順番にマーク対象を決めていき、対応を明確にしていく。
主な約束事は……
Profile
がーすけ
シメオネのサッカーを深く知るべくアトレティコ・マドリーのマッチレビューを書く一般人。カッコいい音楽と走るのが速いお馬さんと可愛いシベリアンハスキーと可愛い柴犬が大好き。最近はシーズーに興味がある。本当は川崎フロンターレのファン。