いわば「ベンゼマの代役」としてのレギュラー格上げ。しかし36歳のストライカーは自身3度目のW杯で6試合に先発し、ムバッペ&メッシに次ぐ得点ランク3位の4ゴール、そして今大会も常にチームのために献身するプレーで、フランス代表の決勝進出に大きく貢献した。そんな彼が、我がクラブにいる幸せ。ミラニスタにはおなじみ、nato(@nattou2017)さんがオリビエ・ジルーのカタールW杯を振り返る。
この原稿を書くことはW杯決勝前からすでに決まっており、ジルーについて書くことも決まっていたので、前半終了前にオリビエ・ジルー(とウスマン・デンベレ)が下げられたのを見てどうすりゃいいんだ……と試合中にもかかわらず頭を抱えた。ゲーム自体も前半のアルゼンチンのパフォーマンスがあまりに良く、そしてフランスがあまりに悪く、それは後半に入っても変わらないので、どう書き始めようか困ったという流れである。
しかしみなさんご存知のように試合の景色は終盤に激変。W杯史に残る素晴らしい激闘になったし、各々の世代で自身が見てきた試合の中でも最高の試合と言う方がいらっしゃるかもしれない。筆者の場合は私情が入るミラン戦などを除けば最も感動した試合だった。リオネル・メッシにディエゴ・マラドーナが絡み続けたロマンティックなストーリー性も良かったと思う。
フランスはW杯連覇の夢が絶たれ、ジルーが前半に下げられた事実は変わらないが、この交代策もあって生まれた素晴らしい決勝戦であることも事実だ。ミランのファンからすれば「そりゃないよ、デシャン」と思う采配だったが、ディディエ・デシャン監督の頭の中にはそんな自分に一生見えない風景があるのだろう。
そしてそれらの事実が否定できないなら、今大会のフランス代表においてジルーが果たした貢献も絶対に否定できない。ここでは素直にジルーの活躍を称え、ミラニスタとして彼の軌跡を振り返りたいと思う。
“代表引退待ったなし”の1年前
まず初めに、本来なら今大会にジルーの存在はない可能性が高かった。フランス代表には昨年開催されたEURO2020から今年のバロンドール受賞者カリム・ベンゼマがサプライズで復帰したが、ジルーは途中出場2試合に終わった同大会後、そのベンゼマと入れ替わるような形でパタリと代表チームに呼ばれなくなった。年齢も当時35歳で、このまま代表引退待ったなしかと周囲は見ていたのだ。
ちょうどこの代表から離れていた期間は、のちにセリエA優勝に大きく貢献することになるミランへの移籍時期とかぶっている。そのプレー内容は割愛するが、1年目からミランで本領を発揮した(公式戦38試合14ゴール4アシスト)彼を無視し続けるのはデシャン監督としても厳しかったようで、2022年に入ってからジルーは代表復帰を果たした。
迎えた22-23シーズン開幕時のジルー自身の目標はミランでの活躍、そしてW杯に出場することだった。本大会のメンバーに選ばれるかどうかは数カ月前の段階だと当落線上だったので、アピールするためにはミランでの活躍が必要不可欠。その大事な序盤戦を公式戦19試合9ゴール5アシストの成績で乗り切ったジルーは、見事にW杯への切符をつかみ取ることに成功した。
この間、ジルーは9月に行われたUEFAネーションズリーグでも得点をマークし、ティエリ・アンリが持つフランス代表歴代1位の通算51ゴールまであと2つと迫っており、それをW杯で塗り替えられるかが注目された。
しかし同じCFのポジションにはジルーと“訳あり”な関係でもあるベンゼマが君臨し、ジルーは彼の控えが基本。それぞれに長所と短所がありながらも、全体で見ればジルーの上位互換とも言えるベンゼマがスタメンということに異を唱える者は少なかっただろう。
ところが、大会直前にベンゼマが負傷でチームから離脱するという大アクシデントが発生。これにより、ジルーが自然とスタメンに押し出された。
ミラニスタは、言いたかった
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nato
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