ワールドカップで36年ぶりにベスト16に進出したポーランド。彼らがさらに上へと勝ち上がるためには、守護神の活躍が欠かせないだろう。
PKセーブ率は30%を誇る
ポーランド代表は苦しみながらも何とかグループCの2位に入ってグループステージを突破した。勝ち点4で3位のメキシコと並びながら、得失点差で上回っての2位通過となっており、いつになく「1点の重み」を実感したことだろう。ということは、彼らを1986年大会以来のノックアウトステージ進出に導いたのは、他の誰でもなく、グループステージで2本もPKを止めたGKボイチェフ・シュチェスニーなのだ。
第2戦のサウジアラビア戦では、PKを止めただけでなく、そのこぼれ球を詰めようとした相手のシュートまで驚異の反射神経でセーブしてみせた。続く第3戦のアルゼンチン戦では、空中戦の競り合いで自らPKを献上しながら、リオネル・メッシのPKを完璧に止めたのだ。こうしてシュチェスニーは、1974年大会のヤン・トマシェフスキ(ポーランド)、2002年大会のブラッド・フリーデル(アメリカ)に続いて史上3人目となる、1大会で2本のPK(PK戦を除く)を止めたGKとなったのだ。
歴史に名を刻んだシュチェスニーだが、英紙『Daily Mail』によると彼のPKストップ率はそんなものではないという。アーセナルでプロキャリアをスタートさせた同選手は、アーセナル時代に23%(26本中6本セーブ)のPKセーブ率を誇り、ユベントスに移籍してからはそれを33%(34本中11本セーブ)まで向上させている。ローン契約で加入したローマ時代などを含め、これまでシュチェスニーは87本のPKのうち26本も止めてきたというのである(セーブ率30%)。
メッシのPKは「コースを知っていた」
アルゼンチン戦で自身の左側に飛び、右腕一本でメッシのPKを止めた時には「どちらに蹴るか知っていた」と試合後に明かした。「メッシは相手GKを見て蹴る時もあれば、力で蹴り込もうとすることもある。思い切り蹴るなら自分の左側に蹴ると思っていた。そして彼が助走で止まる気配がなかったので、パワーで来ると察知し、止めることができたんだ」
サウジアラビア戦の後にも、シュチェスニーはPKストップの秘訣を明かしていた。「いつも対戦チームの中で5、6名のPKキッカーについて予習をするんだ。彼らが重要な場面でどんなことをしてくるのか。(PKを止められるのは)直感ではなく、ちゃんとした準備のおかげなのさ」
シュチェスニーには“得意なPKストップ”というのがあるそうだ。「キッカー次第だけど」と前置きした上で「事前に蹴る方向を決めて思い切り蹴ってくるキッカーの方が自分は得意なんだ」と明かした。「そういう場合、方向さえ合えば止めるチャンスがあるからね」
ポーランドは現地時間12月4日に行われるラウンド16で前回覇者のフランスと対戦する。シュチェスニーにとってはW杯新記録となる1大会で3本目のPKを止めるチャンスかもしれないし、PK戦までもつれれば、それこそシュチェスニーの独擅場になるかもしれない。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。