2022-23シーズン、ドイツクラブの試合を観戦している人で、スタンドから立ち込める発煙筒の煙を目にしていないという人はいないだろう。スタジアムに観客が戻るとともに、“暴徒”たちの存在がめにつくようになっているという。その背景に迫る。
『フットボリスタ第93号』より一部加筆し掲載
2022-23シーズンになってパンデミックによる入場制限がかなり緩和されたことを、世界中の観客が喜んでいる。最良のスタジアムでは再び濃密で魅惑的な雰囲気が出来上がり、このスポーツを魅力的にするのに大きく貢献する。しかしそれと同時に、ファンカルチャーの影の部分も再び露になった。
「今季開幕時にようやくコロナ禍の制限が撤廃されるとともに、ファングループは自分たちの“ 仕事”を始めた。つまり、ウルトラはモダンサッカーの反対派として自分たちを見ているのだ」と『南ドイツ新聞』。
具体的には、ドイツのクラブの試合で暴力や発煙筒の過剰使用が目立っている。しかもその理由が抗議や批判だけでなく単なる殴り合いや暴動で、多くの人が怖がっているのだ。
ファンプロジェクトのコーディネートを行っているミヒャエル・ガブリエルは「間違いなく事件は多く、かつ濃厚な事件が増えている」と憂慮。ドイツでは全プロクラブが、ファンプロジェクトという枠内である種社会教育的な活動を行っており、ガブリエルはファンシーンを最もよく知っている人物の一人だ。そんな彼は“素の暴力”により、関係ない人たちまでもが危険にさらされることが増えていることを心配している。
フランクフルトのCLでのマルセイユとのアウェイ戦とカンファレンスリーグのニース対ケルンでは、何十人にもなる負傷者と多くの“トラウマ”を植え付けられた人たちを出してしまった。……
Profile
ダニエル テーベライト
1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。