ユン・ジョンファン体制3年目、勝負のシーズンとなった今季の課題はあまりにも明確だった。守備は計算できるが、点が取れない――。ここ数シーズン続いた根本的な問題点は、ついに解決されないまま終わりを迎えてしまった。ジェフ千葉を追い続ける西部謙司氏が、その謎を解き明かす。
2022年のポイントは「2点目」だった
2022年の最終順位は10位。失点42は少ない方から5番目でファジアーノ岡山と並んでいる。3位の岡山と同じ失点だったのは悪くないが、得点が違い過ぎた。岡山は61ゴールでリーグ7位なのに対して、ジェフユナイテッド千葉は44ゴール。下から6番目だった。
ユン・ジョンファン監督体制の3年目、得点力不足の課題は解消されなかった。
ユン監督の戦術は典型的な堅守速攻型だったので、そんなに多くのゴールが必要なわけではない。ただ、得失点差わずかに2というのはいくらなんでも少な過ぎる。
勝敗と得点の関係を見てみると、無得点が14試合ある。内訳は引分けが3試合、11試合に負けている。最も多い1得点の試合が15試合で5勝7分3敗。2得点を奪った9試合は8勝1敗、3得点の3試合はすべて勝利している。守備型の戦術なので3得点がわずか3試合なのは仕方ないにしても、2点取れればほぼ勝ちだった。2得点して敗れたのは第24節の大分戦(2-3)だけである。
1得点では勝ち切れていない。1-0の美学とよく言われるけれども、1-0で勝利の山を築くのは実際にはかなり難しいのだ。
千葉の得点力不足とは、2点目が取れなかったことだ。仮に1-1のドローだった7試合を2-1で勝利したとすれば、14ポイントのプラスとなって勝点75なので、3位岡山の72ポイントを上回る。つまり、少なくともトータル50得点なら悠々プレーオフ圏内に入れたわけだ。50得点はリーグ12番目に過ぎず、そんなに高い得点力ではない。高望みではなかったはずだ。もちろんこのような単純な話ではないわけだが、千葉にとって2点目を取れないのがいかに痛かったか、何となくイメージしていただけるのではないだろうか。
ターゲット役がいない?実現しなかった「攻撃的守備」
得点力不足はシーズンが始まる前から重々承知だった。もちろん手は打っている。
ユン監督が掲げていたのは「攻撃的守備」だ。敵陣でボールを奪うこと。それができれば相手の守備を崩す手間も省ける。ただ、敵陣でボールを奪うには敵陣にボールがなければならない。
敵陣にボールがある状態にするための方法は2つ。ボールを保持して押し込む、ロングボールを蹴る、この2つだ。ところが、どちらも上手くいかなかった。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。