10月30日に行われたウルグアイ1部リーグの年間優勝決定戦は、後期リーグ王者ナシオナルが前期リーグ王者リベルプールに1-4で勝利。この試合で先制点と決勝点を挙げ、通算49回目のリーグ制覇に貢献したのが、今年7月27日にW杯前までの短期契約(11月1日に退団を正式発表)でプロキャリアをスタートしたナシオナルに16年ぶりの電撃復帰を果たした、35歳のウルグアイ代表歴代トップスコアラー(134試合68得点)、ルイス・スアレスだ。
ボールを持たなくても存在感だけで圧倒的
ルイス・スアレスが「期待を裏切らない男」であることは、すでに立証済みのファクトだ。アヤックスでもリバプールでも、バルセロナでもアトレティコ・マドリーでも、過去所属したすべてのクラブにおいて望まれた通りの、またはそれ以上の結果を残し、今もサポーターから慕われている。
そのスアレスが古巣ナシオナルへの復帰を決意し、欧州での輝かしいキャリアを経て16年ぶりに母国のサッカー界に帰還してから3カ月が経った。結論から述べると、スアレスはやっぱりスアレスだった。彼の復帰デビュー戦となったコパ・スダメリカーナ準々決勝のアトレチコ・ゴイアニエンセ戦を現地で観戦した時からこれまで、私は一体何回「さすがスアレス」とつぶやいたことだろう。それほど彼は、果たせるかな、期待を裏切らなかったのだ。
コパ・スダメリカーナでは準々決勝での敗退が決まったナシオナルだったが、ウルグアイ1部リーグではスアレスを迎え入れた第2節から無敗を貫き、最終節を残した時点で優勝。その後10月30日に行われた年間チャンピオン決定戦でも2ゴールを決めて新たなタイトル獲得に尽力し、復帰後の全15試合のうち、代表チームの親善試合と重なった1試合を除く14試合に出場したスアレスは、宿敵ペニャロールとのクラシコでの1ゴールを含む8ゴールをマークしただけでなく、ボールを持たない時の動きからチームが仕掛ける全員攻撃に大いに貢献。SBのレアンドロ・ロサーノを除くレギュラー格のフィールドプレーヤー全員が得点を挙げることに成功したナシオナルの「陰の功労者」と評価された。
ウルグアイ人の分析家ナウエル・ベアウは、スアレスが世界トップクラスのストライカーと評される理由について「ボールを持たなくてもゴール前での存在感だけで圧倒的なポテンシャルを発揮する」と説明しているが、ナシオナルでも――たった3カ月の間に――それが裏付けされた形となったのである。
高給よりも古巣を選んだ「夢のような話」
だが、スアレスの存在が及ぼす影響は、ピッチの中だけにとどまらなかった。……
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。