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ウナイ・エメリ、突如イングランドへ…オーバーラップする2つの出来事

2022.10.26

 突然、飛び込んできたウナイ・エメリ監督の、ビジャレアル退任およびアストンビラ行きのニュースは、私に2つのことを思い出させた。

「裏切り者」と呼ばれた男

 1つは、ファンデ・ラモスのトッテナム行き。2007年10月26日だから、ちょうど15年前のことだ。

 ファンデはセビージャ監督の座を捨ててトッテナム監督に就任した。その2カ月前、市内一の高級ホテルのカフェでファンデとトッテナムのフロントが“秘密会談”するところがウェイターによって暴露されていたこともあり、噂は立っていた。

 一報を伝えるセビージャの声明には「一方的な契約解除であったこと」と「前監督はお別れ会見の申し出を断り、WEBをお別れの場に選んだ」という2つが明記されていた。そこから伝わってくるのは「我われを捨て、会見に臨む勇気もなかった」という恨み節である。

 当時会長だったホセ・マリア・デル・ニドはファンデを「裏切り者」と呼び、レアル・マドリー監督としてサンチェス・ピスファンに戻って来た際には、金の亡者を意味するファンデの顔が印刷された偽札がばら撒かれた(セルヒオ・ラモス来訪時にも同じことがあった)。

 トッテナムが用意した条件は、4年契約で報酬2100万ユーロ(現在のレートで約30億8340万円)だったという。

お別れ会見は受けたが…

 もう1つは、ウナイ・エメリのパリ・サンジェルマン行き。

 こちらは2016年6月26日のことだった。セビージャでUEFAヨーロッパリーグ3連覇を達成したばかりのウナイをクラブは必死に引き留めたが、叶わなかった。ウナイの退団で急きょホルヘ・サンパオリが呼ばれたのだが、「清武弘嗣の獲得にOKを出したのはウナイであり、サンパオリではない」と記者たちが言っていたことも思い出される。

 この時も、セビージャの公式見解ではウナイはお別れ会見を断ったとしており、会長のホセ・カストロ・カルモナは「すべての偉大な人物はお別れ会見を開いている」「ファンにお別れしなかったのは彼の問題」という言葉を残している。

 一方、今回ビジャレアルが用意したお別れ会見をウナイは受けた。

 一見友好的な別れ方だったように見える。だが、それでもクラブ声明には「一方的な契約解除」であることが明記されているし、お別れ会見ではフェルナンド・ロッチ会長が「シーズン途中で悪いタイミング」「逆足を突かれた(ネガティブなサプライズだったの意味)」と漏らし、記者たちからは「途中で投げ出したという印象だが」とか「プレミアリーグで15位のチームがそんなに良いのか?」といった厳しい質問が飛び、ウナイは「プロフェッショナルは時には冷淡で計算高くなくてはならない」などのぎりぎり誠実なコメントで切り抜けた。待遇は4年契約で手取り年俸700万ユーロ(約10億2780万円)と言われている。

 なお、ビジャレアルの新監督はキケ・セティエンが濃厚らしい。3月に会った時には「監督はもうこりごり」というようなことを言っていたが、こちらの行方も見守りたい。


Photo: Getty Images

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木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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